アトラスの姫 公演情報 ロマングラス「アトラスの姫」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    とある国で一族のはみ出し者と噂されている絵描きのフデが国からとんでもない依頼を受ける。それは国の地図をつくること。フデと仲間たちは"三角の力"を寄せ合って、それを実現しようとするのだが...。
    地図と噂を巡る物語の行方は?

    稽古見学させてもらって「御伽話のようで、とても今だ」と思ったけど、全貌見届けて、ますますそう思った。
    シスターフッド、家父長制、SNSを巡る匿名性、それを使っていとも簡単に噂を流したり、火をくべたり、犬笛が吹けるということ。全てが全て意図的に直接的に描かれたものではないにせよ、そう感じるに十分の現代との接着面があった。「物語」に実直に向き合い、その力を信じ抜いた作品でもあった。それでいて地図を作る時のように、演劇を、観客を鳥瞰する様演出、語る俳優と語られる観客の関係を用いて、誰しもが噂の発信と受信の当事者になりうることを伝えていくようでもあった。
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    ネタバレBOX

    一人だけ女として生まれてしまったことを悔いるフデには、女性がゆえにできなかったこと、させられなかったこと、そして、させられたことに苦しんだ多くの女性が映った。
    立場は違えど王女にもまたそれに似た葛藤があり、そんな二人が手を取り合うことは、それに仲間が共闘することは、紛れもない、いわば世界に対する"me too運動"のはずだった。だけど、顔のない噂が、犬笛が、それを阻んでいく。お願いだから、と何度も思った。そう思わせる顔を、まなざしを俳優たちがこちらに向けていた。
    地図をつくるときに用いる三角が何を示していたのか。そうしたことから物語は現実へと挿入されていく。

    アフタートークでは"噂"にちなんで、話題にされる人(演劇の作り手)/話題にする人(観客であり書き手)として作・演出の髙山さんとお話をしたのだけど、この物語からのその切り込みも鋭い視点だった。それはそのまま噂を流す人、流される人であるのだ。「演劇を観て何かを書くときに気をつけていることはありますか?」という質問は、本当にこの演劇の直後に相応しすぎる質問だった。それはそのまま私に"噂を流す側としての覚悟"を問う質問で、私は「いつもこわいと思っています」という第一声を思わず漏らした。目の前には多くの観客がいた。こんなにも劇世界と現実をシームレスに繋ぐ質問と風景があるだろうか。自分をアフタートークに呼んでいただいたことを嬉しく思うと同時に、今一度襟元を正さなくてはならない気持ちにもなった。だって私もまたこの瞬間にも筆をもっているのだから。

    一緒に観た娘も「すごい面白かった」と言った。トークを娘に見られるのは恥ずかしかったけど、何か感じてくれてたらいいな。車に乗って感想を聞いたら「ママくねくねしてた」と言われた。鋭い質問への焦りが見えたのかもしれない。帰ってすぐ家族にもそう共有された。ここにも噂を流す奴がいると思った。

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    2024/06/22 04:44

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