黒い太陽 公演情報 M²「黒い太陽」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    面白い、お薦め。
    1970年日本万国博覧会の開催に係る出来事を、岡本太郎を中心に描いた群像劇。
    タイトル「黒い太陽」が、岡本太郎の心にある深く強い思いであることに感動した。これは、芸術家 岡本太郎だけではなく、多くの人の普遍的な<思い>ではなかろうか。
    なお、上演前には当時の実況中継等が流れ、その雰囲気を知ることが出来るので、早めの会場入りをお勧めする。
    (上演時間1時間50分 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    半円を描くような舞台、奥に細紐で円柱のようなもの。上部(天井)には舞台と対になるような雲のような輪、そして客席と舞台の間にも白い輪。少しずつ輪の大きさが違うため、天地それぞれから眺めたら遠近法のように感じるか。勿論 天井を刳り貫いていることから、万博における丹下健三「大屋根」と岡本太郎「太陽の塔」の関係を意識した造作に思える。

    物語は、岡本太郎(豊田 豪サン)が万博に関わるまでの過程、そして彼を育んできた家族を含め重層的に描く。進行役は太郎の養女になった岡本敏子(根本こずえサン)、特に太郎の激しい気性に込められた心情を代弁するような語りが上手い。岡本太郎-インターネットで検索すれば概要を知ることはできるが、舞台(フィクション)としての面白さは本人等とは違った人物像や観点で描き出すところ。それがタイトルに表れているよう。また口癖のような〈芸術〉とは〈生きること〉だと言い、生き様を感じさせる。

    当初「黒い太陽」は、「太陽の塔」にある3つの顔(地下の顔を入れると4つ)のうち、背後にある(過去を表す)ものと思っていたが、実は母への思慕。見上げれば太陽がある、目を瞑れば暗闇の中に母(太陽)の姿をしっかり思い出すことが出来る。母の気質(性癖?)には振り回されたようだが、両親からは愛情を注がれたよう。

    愛という狂おしい情熱で生きた母 かの子(内海詩野サン)、そして母の愛人との共同生活まで受け入れた父 一平(市原一平サン)、何が普通か分からないが、少し歪に感じられる家庭環境の中で育った太郎の生い立ちがしっかり描かれている。その思いが万博への参画、そして世間からの批判を無視するへ繋がる。自分の信じる道(事)を進む。万博について、人間は進歩も調和もしていない、政府の思惑である安保改定(反対運動)から目を逸らすためなど、太郎の気骨に絡め反骨ある台詞・場面を鏤める。

    舞台技術は、ハーモニーのような柔らかく優しい音楽、人影を壁面に映し出すような陰影が効果的だ。半円舞台であることから、役者の立つ位置によって表情が見えないシーンがあるが、そこは ご愛敬か。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2024/06/01 10:39

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