実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/16 (木) 15:00
劇団シェイクスピアシアターに所属していた平澤智之さんと絵里さんのW演出で、お二人がマクベス、マクベス夫人を演じ、演者のなかには身体障害を持った俳優も交えての演劇という事で画期的だと感じた。
『マクベス』劇中における役者が、主役や主役級に至るまで、大仰な演技、オーバーリアクションなのには所々違和感や疑問を感じた。まぁ、今回参照にした訳が小田島雄志だったという事にも原因があるような気もするが。
ただし、普通『マクベス』劇であんまり描かれなかったり、誤魔化したりしがちな夜の営みというか性行の場面や男色を、野性味溢れ、激しく、猥雑に、淫靡にこれでもかと言うくらい舞台前面まで出てきての上下運動、こちらが食い入るように魅入るほどの生々しさがあり、良い意味で座·高円寺2という劇場を見世物小屋かテント芝居か、はたまたかつての九龍城、戦後の浅草場末のストリップ小屋、下谷万年町、上野の山にしたか如くの蹂躙具合でとても良かった。
大抵の場合マクベス夫人を演じる女優が狂う場面で、狂っている様を演じている感が出てしまうものだが、絵里さん演じるマクベス夫人が狂うところでは、本当に狂っているのではと観客に錯覚させるほど、鬼気迫る感じで良い意味で緊張しました。
今回の平澤智之さん演じるマクベスは、野性味溢れ、武勲に秀で、性に放蕩であり、自分が成り上がる為には、どんな残酷なことにも手を染めていくが、ところどころコンプレックスを持っていたり、急に臆病になったりと、今までのマクベス像より人間味があって、単なるピカレスクロマン悲劇に終わらせてないところが良かった。
あと、個人的に絵里さん演じるマクダフ夫人とろう者俳優のMiCHiさん演じるマクダフの娘、子役の吉村咲希さん演じるマクダフの娘の3人による窮地に立たされた場面での手話を通して通じてるのか、通じてないのか、アドリブを何気なく盛り込んでるのか、とにかく、意思疎通が出来ているのかどうかが気がかりでもあり、面白くもあり、すごく鮮明に記憶に残った。
2024/06/01 01:56
私達の挑戦したかったことの数々を挙げてくださって、嬉しく思います。
日本ではシェイクスピア作品の上演は高尚でないといけないと思われているのか、普通の人間としてのマクベス夫妻の姿というものが描かれたことがあまりない点が、私は不思議でした。彼らは間違いは犯すけれど、一般の夫婦にすぎない。だとしたら愛も喧嘩も性的な感性もあるはずで、そのような生きた人間としての彼らを描きたいと思いました。
客席から見てそこまで生々しく淫靡と感じられたとは、予想以上のお言葉で、びっくりもしましたが、(実際にはキスシーンもなく、他はプロレス技のような動きであったので…) そう言っていただいて、とても嬉しいです。
そのようなマクベス像を細かく観て、人間味があると言っていただいたこと、
また、私の演じたマクベス夫人が発狂する場面についてもお褒めいただいたこと、
どちらも役者として励みになります!本当にありがとうございます!
また、手話を使って演じたマクダフ家の子供達との場面を気に入っていただいたことも、演出家としてとてもありがたく思います。
今回、障がいを持つ俳優を複数名起用ししました。(※個人情報保護のため主催者としては出演者の障がいについて情報公開していません。) その中でもこの場面は、様々な事情を持つ俳優が自由に舞台上で演技をするという私達の方針の、最も明確な形を表すものであったとも言えるでしょう。その場面を好意的に受け入れてくださったことを、大変嬉しく思いました。(ちなみにアドリブはなしで、原作通りの台詞をやりとりしています。) 多くのご感想、ありがとうございます!
今後ともキングスメンの公演をぜひご覧いただけましたら幸いです。
シェイクスピアだけでなく様々な作品を上演してまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。