團菊祭五月大歌舞伎 公演情報 松竹「團菊祭五月大歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「線の太い菊之助の政岡」

     五月恒例の團菊祭夜の部に菊之助の「先代萩」が出た。今回は一子千松に実子の丑之助が配役されたからか、実の親子という実感が強くなった。

    ネタバレBOX

     命を狙われている若君鶴千代(種太郎)を守るべく乳人政岡が神経を払いながら茶道具でご飯を炊く「飯炊」は、空腹に耐えかねている鶴千代と千松の様子を伺いながら時に涙を浮かべて準備を進めるところが見ものである。様子を探りに来た千松を叱ったり、千松と勘違いして鶴千代を叱ったりして謝るくだりで緊張が緩むが、できあがるまでの間どうしても手持ち無沙汰に見えてしまうところである。ここは十八代目勘三郎が丁寧な手前と母性を感じさせてうまいところだったが、菊之助は淡々と仕事をこなしているように見えた。種太郎の鶴千代は気品があり、丑之助の千松はひもじさに耐える健気さが伝わってきてうまいものである。

     栄御前(雀右衛門)の入りになると奥から八汐(歌六)や沖の井(米吉)ら家中の女性たちが出てきて壮観である。雀右衛門の栄御前は強さはあるもの悪の感覚があまり感じられず、鶴千代へと毒入りの菓子を強引に薦めようとして政岡と問答になるくだりが今ひとつ盛り上がらない。そこへ突如千松が入ってきて菓子を食い苦しみ八汐が刺し殺すところは歌六が憎たらしく演じて盛り上がる。皆が奥へ引っ込みひとりになった政岡が千松に「でかっしゃった」と万感の思いをぶつけるところは、実父菊五郎に似て描線が太いところが菊之助独特であった。

     女たちの立ち回りのあとの床下は、右團次の男之助が豪快で手強く、團十郎の仁木弾正の目の大きさ、蝋燭でできた影が定式幕に怪しく映り見ごたえがあった。

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    2024/05/20 15:26

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