実演鑑賞
満足度★★★★
演劇集団nohup&劇団よけいの事 の2団体によるコラボ公演。公演は4回だけだが、すべて満席(完売)。勿論 作・演出は別々だが、どちらの作品も基本は会話劇。当日パンフに nohup主宰の朝比奈史樹 氏が「約10年ぶり、大学以来となる志島との合同公演」と記している。どちらも会話劇だが、ラストの観せ方が違うため印象は全然異なる。
まず「609号室からの脱出」は、登場しないヒロインが2人の男をラブホテルに閉じ込めて といったコミカル調の物語。ラストは、そのような状況になった事情などの謎解きと脱出を…。一方 「口を開け、息だけを吐け」は、今事情を反映させた内容で 途中からサスペンスミステリー調になる。ラストは観客に問い掛けるような。端的に言えば「609号室からの脱出」は人間ドラマ、「口を開け、息だけを吐け」は社会(世間)ドラマといった印象を受けた。その違いをコラボ公演として観せる好企画。
チラシ(裏面)に あらすじが書かれており、「609号室からの脱出」は 2人の男がラブホテルの一室で交わすチグハグな会話、その漂流するような内容から夫々の境遇と状況が浮き上がる。「口を開け、息だけを吐け」は、当日パンフに 劇団よけいの事 主宰の志島はこ さんが「6年ぶりの作演となり、その間に世は刻々とナイーヴになり、様々な痛みが可視化され続けている。本作は器用に生きられない人々の痛みを描いている」といった旨を記している。勿論 コロナ禍のことで、不寛容な世の中になったことを意識しているだろう。息を吐け どころか生き苦しさがしっかり描かれた作品。
因みに、演劇集団nohupは「サイボーグ会社員 美々美」で グリーンフェスタ2024 優秀賞を受賞した新進の劇団。今後 注目していきたい。
(「609号室からの脱出」50分、「口を開け、息だけを吐け」60分 転換兼休憩5分) 追記予定