実演鑑賞
満足度★★★★★
子供の日の祝日企画に見えるが、どうして、どうして、大人の寓話である。おなじみのアリババやシンドバットのほか三話、二時間四十五分の大作だが全く飽きない。
感想は大きくは二つあって、コロナ以後、しきりに流行った朗読劇と称するお手抜き公演
と一線を画する舞台になっていること。究極の地味に徹した公演(そこがいわゆる朗読劇と同じ)なのに、俳優をノーセットのアトリエの中を自在に動かし、音楽(国広和毅、最近良い舞台が多い)で官能的な舞台を作っていること。ことに多様なリズム(拍手や床をたたくなど)を使って芝居をダレさせていないところが秀逸。
二つ。テキストレジの巧妙さ。テキストは20年前にすでに文学座が公演しているイギリスの現場演出家の作ったホンで、実際の舞台向きに出来ている。それをどれだけアレンジしているかは知らないが、テキストレジが巧みで三時間近い長丁場なのに、子供向きにという意識もあってか、ダレ場がない。大人向きでもある。俳優たちはあまり知名度の高い俳優は出ていないが、皆、きっかけを落とさないように懸命にやっていながら楽しそうだ。これは物語を演劇にした朗読劇の進化形である。
演出・五戸真理枝は、昨年大きな賞を連続受賞したが、今年のパルコの太宰治はニンにあっていなかったのかも知れない。文学座の女性演出家たちは。舞台の上に演劇だけの世界を作っていくのが、皆上手い。中でも五戸は、得意の領域にハマると手が込んでいて良い舞台を作る。これで恢復して、これからもいい舞台を見せてほしいものだ。