ルードウィヒ・B 公演情報 プロデュースNOTE/アーツイノベーター・ジャパン「ルードウィヒ・B」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    歌劇『フィデリオ』序曲
    『ミサ・ソレムニス』
    『悲愴』
    『月光』
    『田園』
    『運命』
    〈休憩〉
    交響曲第九番『歓喜の歌』

    岩村力(ちから)氏指揮のオーケストラの演奏の合間に朗読劇のスケッチが入る。
    亡き母マリアと亡霊レオノール役に真野響子さん。ベートーヴェンの唯一作ったオペラ、『フィデリオ』。政治犯として監獄の独房に囚われた夫の為、妻レオノーレは男装しフィデリオと名乗り潜入、救出する物語。(レオノールとは多分、男装したレオノーレのことなのだと思うが?)
    死者からの呼び掛け。「心で音を聴け」。

    ベートーヴェン(田代万里生氏)の死後に発見された「ハイリゲンシュタットの遺書」。1802年、31歳の時に持病の難聴が悪化、高度難聴者となり、自殺を考えて弟達に書いた遺書。(ハイリゲンシュタットは地名)。

    同じく死後に発見された、1812年、41歳の時に書かれたが送られることのなかったラブレター。相手は「不滅の恋人」と呼ばれる謎の女性。今作では“ジュリエッタ”の愛称をもつジュリー・グイチャルディ伯爵夫人(Juice=Juiceの井上玲音〈れい〉さん)となっている。(現在ではヨゼフィーネ・ブルンスヴィック説が強い)。

    フリードリヒ・フォン・シラーの1785年の詩、『歓喜に寄す』。1792年、22歳のベートーヴェンはいたく感動し、いつか曲をつけようと思い立つ。1815年頃から作曲を開始、1824年に到頭完成。5月7日の初演ではミヒャエル・ウムラウフ(岩村力氏)が正指揮者として立ち、ベートーヴェンは総指揮者の名目で各楽章のテンポを指示した。

    シラーの詩にベートーヴェンが「おお友よ、このような旋律ではない!もっと心地よいものを歌おうではないか。もっと喜びに満ち溢れるものを。」の台詞を織り込んだ。不協和音や低弦の旋律に対し、この台詞で否定していく。第1楽章、第2楽章、第3楽章までのメロディーをも否定した上で、到頭「歓喜の歌」のモチーフが現れ、いよいよ肯定される。自らの努力を全て否定した上でやっとこれじゃないか、と思えたメロディー。「歓喜の歌」が始まる。

    指揮者の岩村力氏が唐突に振り向いて台詞を言うシーンに驚く。しかもやたら巧い。

    ネタバレBOX

    胃癌で亡くなった手塚治虫。連載中未完に終わった『ネオ・ファウスト』、『グリンゴ』、そして『ルードウィヒ・B』。今作のタイトルもそこから来ているのだろう。

    「歓喜の歌」とは、死への歓喜なのではないか?自分が課せられた役目を果たし終え、やっと死ぬことが許される解放感。“死”という自由への歓喜。エヴァンゲリオンでの使い方が正解だと思う。

    音が悪く感じてショック。東京文化会館や浜離宮朝日ホール、サントリーホールと比べると雲泥の差。たまたま自分の席の位置が悪かったのかも知れないが。
    ドラマ部分がイマイチで勿体ない。曲をバックに喋るので台詞も聴き取りにくい。それこそ、重要な台詞はスクリーンに映して欲しかった。

    0

    2024/05/08 23:51

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大