第十七捕虜収容所 公演情報 日本の劇団「第十七捕虜収容所」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「多様性がぶつかり合う脱走劇」

     スーパー・エキセントリック・シアターの栗原功平がプロデューサーとなり、ジャンルを問わず日本のあらゆる劇団から一名ずつ俳優を呼び寄せた座組が目を引く「日本の劇団」の実質的な旗揚げ公演である。ビリー・ワイルダー監督の映画版でも名高い1951年初演の古典が、俳優たちの力演で活気ある舞台として蘇った。

    ネタバレBOX

     第二次大戦末期のドイツの捕虜収容所には、アメリカ人ばかりを集めた兵舎があった。クリスマスも近い寒い日、密かに脱走を計画した仲間が銃殺されてしまう事件が起きる。兵舎のメンバーのなかにドイツ兵のスパイがいるのではないかと緊張が走り、皮肉屋でドイツ兵に嗜好品を売りつけ買収しているセフトン(多田直人)に疑いがかけられる。セフトンは新顔のダンバー(鹿野宗健)にやたらとつっかかり兵舎の雰囲気はますます険悪になる。ダンバーはドイツの軍用列車を爆破した事実を得意気に語るが、なぜかその話が漏れ伝わり逮捕されてしまう。はたしてスパイは誰なのか、そして不当に逮捕されたダンバーは収容所から抜け出せるのかーー

     さまざまな劇団に所属する俳優が一堂に会するこの座組を観ていると、一口に劇団といえども流派がさまざまであることに気付かされる。写実的な造形をする者が一方でたっぷりと大芝居をする者もいて目まぐるしいが、統一感がなくてもノイズにならないのは収容所という作品の設定に拠るところが大きいだろう。収容兵を演じた俳優たちにはそれぞれ見せ場があり、愉しみながら演じていたことがよくわかった。なかではジュネーブから来た監察官を演じた岡本篤がちょっと出ただけで舞台を締めた。

     銃殺や脱走の場面なども描かれる映画版と比べると、一杯飾りでシンプルな原作はすべて台詞で語られ、観客の想像力に核心が託されていたというのも発見であった。客席はよく湧いていたが、今日的な上演意義のようなものが発見できればなおよかった。
     

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    2024/04/29 17:15

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