きみどりさん 公演情報 東京ネジ「きみどりさん」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    美しいホームドラマを、「喉に小骨の刺さったような刺激」とともに、少し奇妙な空気感の中で
    独特の手触りがした。
    これがこの劇団の持ち味なのだろう。

    「人と人」とがぶつかったりすることが、「人間関係」でもある。

    ネタバレBOX

    きみどりさんという、キテレツな人が、そこにいてもいなくても、家族は適当な距離を保っていて、一時その距離が離れても、またしかるべき適当な時期に、適度な位置に戻ってくる。
    距離的だったり精神的だったり。
    つまり、きみどりさんが、いてもいなくても、この家族はこんな風になっただろうと言うこと。
    基本、とてもいい関係で、仲の良い家族だったということだ。

    ぶつかり合える「人」がいるというだけでも、関係性があるということであり、それは人間同士の付き合いでもある。
    ぶつかり合える人さえいなくなった世界は、争いがなく、一見平和で、良さそうなのだが、ココロではつながっていない。
    だから、この家族は、ココロできちんとつながっている、「いい家族」なのだ。つまり、そこここで、「家族が崩壊」している現実の中では、「美しいホームドラマ」でもある。

    そして、きみどりさんも、その「美しいホームドラマ」の中に入っていたと言ってもいいだろう。ただし、それは少し哀しい。

    「家族」と「家」と「場所」。

    「きみどりさんは、家(うち)のおばあちゃんだけど、私のおばあちゃんじゃない」という台詞がいい。
    それは、再婚した父親が聞いたら、かなり微妙な台詞であったりするが。そういうセンスは、うまいと思う。

    昭和・平成と連なる、このストーリーの中で、きみどりさんの設定年齢を考えながら観たのだが、舞台の中のきみどりさんは、声を張り元気が溢れていた。しかし、設定年齢に近い役者が演じていたら、あの発声とは異なっていたし、もっと悲惨な印象を受けたと思う。特にラスト近くのボケが酷くなってからは。

    きみどりさんが劇中で「ここで待っていないとダメなんだ」という台詞には、ぐっときてしまった。でも、あえて、ここを広げないセンスの良さがあるとも思った。

    この舞台を、きみどりさんの視線で観ると、他人であっても、心配してくれる人がいて、友だちもできて、そして最期まで看取ってくれるなんて、なんて良かったのだろうか、などと思ったりもする。
    それは、リアルな高齢者問題だったり。

    そこのあたりをよく考えてみると、きみどりさんエピソードは、「家族」と言うよりは、昭和のご近所さん付き合いが、家の中で行われていた感じではないだろうか。
    わいわいがやがやとして、人の悪口を言ったり、テレビの話をしたりという井戸端会議的な感じを含めたご近所付き合い。やっばり、人がいるから、ぶつかったりもするわけだ。
    つまり、家族の物語でもあり、近所を含めた人付き合いの物語でもあったのだ。

    劇中で何度もコールされるタイトルは、お芝居であるという現実に戻されることは不思議となく、きみどりさんが、喉に刺さった小骨のように、いつも家族たちのどこかを刺激している様子に思えた。
    その「喉に小骨の刺さったような刺激」とは、すなわち「家族の存在」だったりもするのだ。特に思春期だったりの。

    そして、どの役者もいいキャラクターしていた。そのハマリ具合が素敵だ。

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    2010/08/02 09:34

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