少女仮面 公演情報 座・高円寺「少女仮面」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    カッコよかった伊東由美子
    劇団離風霊船の伊東由美子が「念願の唐十郎作『少女仮面』で、主役・春日野八千代を演じながら、この作品の一つのテーマである「老いていく肉体」を、今だからこそ身を以て表現する」とのことだが、皮肉にも50歳の伊東さんはじゅうぶん若くて魅力的(笑)。昨今の宝塚の男役にはすっかりなくなっている正統派タイプで懐かしくさえある。「老いへの執念と哀惜」には程遠い感じがしたが、その演技にすっかり魅せられてあっというまの1時間30分。「少女仮面」は何度観ても見飽きない面白い作品だということを実感。唐作品の中では比較的わかりやすい作品だと思う。

    ネタバレBOX

    「少女仮面」は昨年春のF/Tトーキョーの近畿大学版の際に詳しくストーリー解説をしながら書いたので、今回はあらすじは省略させていただきます。
    冒頭の老婆(朱源実)と少女貝(浅田より子)の会話は高所で風に吹かれながらの場面で、なんとなく「離風霊船」というイメージ。これから「大人の門」をくぐるといった趣は薄らいだ。腹話術師(柴田明良)と人形(京本千恵美)は、柴田が二枚目のせいか近畿大版より哀切さがあり、人形の京本は宙吊りになってとても不気味(この人形、往年の宝塚トップスター、真帆しぶきに似ている)。水道飲みの男の荒谷清水は南河内万歳一座でもお得意の身体能力を生かす。春日野はあくまで本人だと思い込んでいる狂人だから、かつて白石加代子や渡辺えりが演じたように、本物の男役スターに見えなくてもかまわないのだが、伊東は60年代の男役スター古城都を髣髴とさせる美形で、登場したとき「嵐が丘」の「ヒースクリフ」そのものに見え、声もハスキーで魅力的だ。今回は「若さ」の象徴である少女貝が稽古の途中から高圧的になって立場が逆転し、春日野が打ちのめされる演出ではなかったので、腹話術師と人形との対比は生きてこない。満州の幻影場面でも軍隊の行進は出さず、防空頭巾にシャンシャンを持った乙女たちの可憐さが印象に残り、原作のもつ「虚構性」や「苦悩」は感じられなかった。原作のおどろおどろしさを体感したい人には不満が残ると思う。
    演出は唐組の久保井研。意外にアングラのコッテリ感がなく、おしゃれな感じでまとめてある。それにしても、老婆が言う「なれるよ、お前なら。ステージに立てる。バリッとした宝塚スターに!なれないとしたら、女々しい組織のせいさ」という台詞、まさにそのとおり宝塚の実態を表していて(笑)、唐さんはよくご存知だなぁと別の意味でも感心した。

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    2010/07/28 17:28

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  • tetorapackさま

    コメントありがとうございます。
    tetoraさまのほうへ返信させていただきます。

    2010/07/30 05:58

    きゃるさん

    やっぱり観られたのですね。私もいま、自分のをアップしましたが、いやー、受けた印象はまたまたすごく似ているようです。

    私は、この「少女仮面」が大好きなので、思い入れ込みのレビューになってしまいましたが、これも正直な思いです。

    >今回は「若さ」の象徴である少女貝が稽古の途中から高圧的になって立場が逆転し、春日野が打ちのめされる演出ではなかったので、腹話術師と人形との対比は生きてこない。

    たしかに貝については、最後の方で、その片鱗が見えるくらいでしたね。春日野と貝、腹話術師と人形、この2組の立場の逆転という対比は「少女仮面」の大きな骨格ともいえるものなので、私も「あっさり感」が否めなかったです。でも、伊東さんの存在感だけでも、今回は大満足でした。たしかに、伊東さん、きゃるさんのタイトル通り、カッコよかったです。まさに嵐が丘のヒースクリフそのものだったし(笑)。

    あと、私は人形役の京本さんの微妙な目遣いや仕草が、人形としての動きは正確にしている上に情感が漂って秀逸に感じました。一緒に観た後輩も同意見でした。

    きゃるさんのすばらしいレビュー、楽しませて頂きました。

    2010/07/30 00:09

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