実演鑑賞
満足度★★★★
観ているはずがコメントしていなかった。小野晃太郎の作品、と言えば前に春風舎でやった、言葉の流れが良く好印象の、あれだろうと思うが確かその時は「シニフィエ」とは名乗ってなかったと思う。
新田祐梨はあの小柄な青年団女優だな。うむ、間違いなく観ている。
物語の筋らしきものはあるが、あらすじは忘れてしまった。
静かに言葉を聞かせる舞台であった。作者は言葉に敏感な人だな、と思う。そして言葉に敏感である事は、人が他者に対して取る「態度」にも敏感で、現代の暴力は往々にしてそうした態度が運んで来る。・・そんな問題意識が舞台上に流れていると、その問題に自覚的に取り組む「活動」が芝居に登場する。「暴力(的なあり方)」から身を守り、あるいはそれを意識化する事で生を立て直す、その手助けをする活動であり、そこには中心となる女性がいる。
「問題化」=意識化された「それ」は、次第に肥大して排除・対決の対象となり、己の心身が「闘争」へと動員される、そういう人物の変化も描かれる。ある人を助けたい思いが、思考によって問題を普遍化し、運動となると、助けたい思いを発露させた相手と育んだ友人関係が変質し、正しさへの承認を欲してそれが得られないと耐えられなくなる。
幾つかのエピソード(人的に幾分繋がってもいる)が交互に描かれる構成だが、惜しいのは、同じ「濃さ」で場面が連ねられて行く。二時間超えの台詞劇が、つらくなる。
こういうのは恐らくテクニックの部類で、何らかの息抜きを観客に許す場面をどう挿入できるか、一コマそれがあれば随分と良いと思った。もっともそういう「場面」に人物を遭遇させるという事になると、意外な趣味だとか、それを巡って他者がどう関わるか等を加筆せざるを得なくなるかもだが。