実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/02/18 (日) 14:00
座席1階
異色の傑作である。美大生が舞台をつくるとこんな感じになるのかなと思わせる、シンプルでありながら変化に富む舞台美術が展開される。
まず驚くのは、スズナリの席に着くまでに舞台の裏(バックステージ)を通って一周する。スズナリでもう何回舞台を見たか分からないが、バックステージを歩いたのは初めてだ。バックステージと客席は薄い養生テープでカーテンのようになっていて、客席を透かしてみることができる。この体験が、今作の舞台につながっていく。
開演前に舞台にあるのは、アルミ製の脚立で作った3つのトンネル。大中小という感じで舞台の中心に置かれている。この脚立を開いたり閉じたり動かしたりして場面の構成をする、じつに効果的な演出がなされる。
冒頭、美大生の問わず語りのトークからスタートする。しかも、舞台袖の入口に立ったままの語りだ。これも、かなり異例の幕開けでとても印象的だ。
物語は、あるデパートの展示物差し替えの現場。閉店後の深夜、高圧的な社員に命令され酷使されるアルバイトたちの会話劇が展開される。それぞれに抱えた事情が少しずつ明らかになってきてこれが、かなりおもしろい。孤独や孤立を胸の内に抱えた若者たちの葛藤が描かれるが、どこか楽しんでいるようなところがあり、けして暗くない。
笑える場面も随所にあって、飽きさせない。テンポ抜群な会話劇で、最後まで客席も突っ走っていける。