実演鑑賞
満足度★★★
開幕すると段ボールの荒野。近未来の話なのか、コノ島で起こっている「う蝕」。(う蝕とは虫歯のこと。虫歯の治療は抜くか削るかしかなく、感染した骨を治癒する方法はない)。
いきなり大地が底なし沼のようにズブズブと沈みゆく天災。土が腐り果てたのか?予測のつかない地盤沈下。船に乗って避難するよう政府は呼びかけるが、島に残ることを選択した者達の話。
た組。の『心臓が濡れる』やTRASHMASTERSの『オルタリティ』のように極限状況に放り込まれた人間達が見せるワンシチュエーションもの。
イキウメの『人魂を届けに』のように横山拓也版哲学談議を妄想したがそういうものでもなかった。雰囲気はMONOの『燕のいる駅』に近い。
能登半島地震の発生によって急遽変更された部分も多々あったという。大変だったろう。繊細な作り手である。
犠牲者の身元を遺体の歯型の照合にて確定させる作業。本土から歯科医師が招聘される。
主人公は坂東龍汰(りょうた)氏。中尾明慶っぽいキャラで博多大吉のようなツッコミ。横山拓也の戯曲には軽薄で軽口で能天気なアンちゃんがよく似合う。
眼鏡が印象的な近藤公園氏。何か岡本篤っぽさを感じた。
綱啓永(つなけいと)氏は金持ちのボンボンで世間知らず、ブランド物のスーツと靴で被災地に現れる。
コノ島に移住し、歯科医院を開業している現地の新納(にいろ)慎也氏。彼の集めたカルテのデータが重要に。
遺体を掘り出すには土木作業員と重機も必須。やっと現地に現れたのは汚れた作業着姿の役人、相島一之氏一人だけ。やたら名前の呼び名の濁音に拘る性格。
謎の白衣の男、正名僕蔵氏の姿も。佐高信(まこと)顔だよなあ。まさに官僚顔。
高台にあるのは沈丁花(じんちょうげ)の漢名である瑞香(ずいこう)から名前を取った瑞香院という神社。沈丁花の花言葉は「永遠」。一応、温泉も湧いている。かなり面白いので期待して大丈夫。
是非観に行って頂きたい。