実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/02/10 (土) 18:30
座席1階
直木賞作家中島京子の原作を舞台化。スリランカから日本に来た青年がボランティア現場で知り合ったシングルマザーと知り合い結婚するが、在留資格をめぐって理不尽な入管行政にほんろうされ、その不当さを裁判に訴える物語だ。
長編小説だが、恐らく原作にはできる限り忠実に戯曲化したものと思われる。15分の休憩を挟んで2時間半。テンポよく話が進んでいくのだが、ちょっと詰め込みすぎた感じもする。
入管行政の残酷さは劇作の大きなテーマだ。ちょうど1年くらい前に、トラッシュマスターズの中津留章仁も「入管収容所」で、働く職員の苦悩も含めて戯曲を作り、大きな反響があった。今回の民藝の舞台では、中心となるのが裁判の場面だ。休憩後の後半に時間を割いて鋭い会話劇が展開されるが、自分としてはこの裁判の場面をもっとじっくり見たかった。休憩なしの2時間くらいの長さで、今作の前半で描かれた部分を思い切って濃縮するという手もあったと思う。
シングルマザーの子役を演じた女性3人は、大人たちの演技を凌駕する勢いがあった。せりふ回しなども鍛えられていて、発音も明瞭。周囲がかすんでしまうような熱演でとてもよかった。
もはや外国人抜きでは成立しなくなっている日本社会。今作でも描かれていたが、その外国人をさげすむネット言論はまったく現実を見ていない。同じ人間として同じ国に住み、時には助け合っていきながら交流する世の中でないと、日本は世界から人権国家としては認めてもらえないだろう。このような芝居が何回も上演され、何が大切なのかを私たちに伝えてほしい。