夜は昼の母 公演情報 風姿花伝プロデュース「夜は昼の母」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    難解。
    こういう作品を心から楽しめる人こそが演劇愛好家なのだろう。自分なんかは解読しようと悶々としてしまうので楽しめはしない。だけど役者陣はヤバかった。山崎一(はじめ)氏はもうジャック・ニコルソンに見えた。今、日本で一番金の取れる役者じゃないだろうか。生の彼を目撃する為だけに足を運ぶ価値は充分にある。凄い男。もう原作なんて吹っ飛ばして全ては山崎一氏の夢だった、で良かった程。いろいろ思い返そうとしても山崎一氏しか出て来ない。記憶まで侵食されているのか!
    騙されたと思って観てみて欲しい、本当だから。

    岡本健一氏はキムタクに見えたり、森田剛に見えたり。今更なんだがいい役者だ。16歳の糞ガキ役で誰にも文句を付けさせない。こういう才人が客を呼び集めることで先に繋がる文化は必ずある。(この手のガチガチの作品が全公演前売り完売とは日本は演劇先進国である)。
    竪山隼太(たてやまはやた)氏はやたら人気がある。常に怒り狂っている。
    那須佐代子さんはいるだけで作品の格が上がる。何かもう凄いレヴェルにまで来てる。
    革命前夜の雰囲気。何かの拍子でこの小劇場から、世界に向かって切り付ける新しいタイプのナイフが勃発しそうだ。それにはまだ見ぬ全く新しい価値観と全く新しい観客が必須。面白いことになりそうだ。

    ネタバレBOX

    スウェーデンの作家、ラーシュ・ノレーンの自伝的作品。
    辺鄙な場所にある客の来ないレストラン。(設定ではホテルらしいが、そうは見えない)。
    16歳の誕生日を迎えるダヴィドは引き籠もりニートの女装ホモ野郎、ジャズを崇拝し何百枚ものレコードを万引きした。家族の恥さらしと散々な罵声を浴びて日々を生きる。
    兄のイェオリはこんな家を出たくてしょうがない。サックス(中嶋しゅう氏の遺品!)を吹きまくる。
    母のエーリンは左の肩の筋を違えてからというもの酷い咳をゴッホゴッホし続ける。借金塗れの生活、ひっきりなしに働き続ける。
    父のマッティンは腕の立つ料理人だが、病的なアルコール依存症。精神科に強制入院させられた事もある。癖のような不快な咳払い。

    ラジオから流れるアメリカの死刑囚キャリル・チェスマンの死刑執行と阻止運動の模様。深夜に生中継される自転車耐久レースを観たくてたまらないダヴィド。

    多分、作家が自分の少年時代を思い返している。思い出しながら、いろんな記憶にカッとなってナイフで切り付けたり。自分の記憶の筈が登場人物一人ひとりの記憶が混線しそれぞれ勝手気ままに喋り出す。収拾のつかない記憶の掴み合い。全員ぶっ殺して自分も死んじまえればいいのに。自分の記憶なのか、誰かの記憶に取り込まれたのか。皆が「家を出て行く!」と罵り合う。酒を一口喉に流し込めさえすれば嫌な事皆何処かに消えて行ってしまう。後のことはその後にゆっくりと考えよう。とにかくここを何とかやり過ごして酒を一杯。

    ※『シャイニング』で凍死したジャック・ニコルソンが映画のラスト、何十年も前の記念写真に写っている感覚を山崎一氏に感じた。

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    2024/02/04 08:48

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