実演鑑賞
満足度★★★★
VR空間上での演劇。まだまだ、世間での認知度は低いと言わざるを得ないのだけども、しっかりとやっている。
「VR(仮想)空間上での演劇」とは、VRヘッドセット及びモーショントラッキングセンサーを演者・スタッフが装着し、VR空間上で演劇を行う。殆どのスタッフは自宅からネットを介してアクセスしており、VR上の同一空間において舞台を作り上げていく。VRSNS、いわゆるメタバースにおいて、花開こうとしている文化の一つだ。
本公演はVRSNSであるVRchat(以下VRc)にて2023年11月23日から26日にかけて行われた『メタシアター演劇祭』に出展していた作品である。
あるレストランにてカップルの男性がプロポーズを行おうとしている。プロポーズを受けるか否か、女性が考えるのだが・・・という一幕シチュエーションコメディである。上演時間は約30分。
VRとなると、まず視覚的な演出をつけられるのだが、3Dゲームの様なゲーム空間を想像して頂ければわかりやすいかもしれない、本作品はそこまで強く出ておらず。むしろ、現実的な小演劇場で行われる公演の形に近い。
舞台中央にテーブルがセットされ、レストランの壁紙レイアウト、そしてステージ奥に上下手で向かい合うように、現実で言う3m程度の高さの台座が壁に掛けられる様に置かれている。基本のセットはこの3点のみである。
「なんだ、ありきたりな話か」と思われたかも知れない。しかしながら、まずはその「ありきたりな話」をVR空間上で行うとどうなるのだろうか。演者は確実に人の動きをトラッキングしている。現実の演劇とはどう違うのか、感じ方、触り心地は違うのか。今回はオリジナルの脚本ではあるが、現実でもやられるような演目でも印象は異なるのか。
ただ、これ以上の詳細は避けたい。というのも、こちらの舞台。YouTube上において、アーカイブ動画として残っている可能性がある。そちらのアドレスをこちらに貼付はしないのだが、是非とも探しだして観てほしい。多分、『X』辺りに・・・。なかったとしても、いずれは観ることもできるだろう。
30分という短い時間ながら、これは良質なシチュエーションコメディであると思う。また、このフライヤー画像、意味が観ることで初めて分かる仕掛けであり、こちらでもちょっとした楽しみがある。
ただし、VRでの演劇は未だ黎明期である。現実空間での芝居とは主に身体操作で異なる点も多く。モーションセンサーの認識ミスで体があらぬ方向に行ってしまったり。
個人のマイクを通しての発声なので、役者によってはノイズがのる。劇場の音響効果とはかなり異なり、特に反響音がないこと等など、気になってしまう点も。
表情は未だにこちらは現実の顔の動きを読み取ることはまだ一般的ではない。そのため、仮面劇か人形劇に近い感触になるかもしれない。
自宅から時間・場所を気にせずにアクセスして観劇が出来るVRの演劇。まだまだ、発展の途上ではあるのだが、確実にその文化は広がってきている。新しい形の演劇として、一度是非ともお試しあれ。