実演鑑賞
前半の幾つもの(恐らく重要な)場面を寝てしまった。どう感想を書くかと迷うが、、
翻訳家事情が最初に語られるのだが、異言語を逐語的に変換する事の困難は、翻訳を続けている内に気づくような真実ではなく、始めた時点で不可能だと気づく位のものだろう。そこで翻訳家の経歴についての想像が萎えてしまう。嘘っぽくなる。その他の部分でもリアリティに?が挟まる箇所がある。
それが後半になってある種の劇的な緊迫感が生じる。だが私は置いて行かれた。60歳の出版社勤務の女性に「懐いている」JKとの関係性も飲み込めずに終わったが、これを納得させる説明が伏線として語られていたのかも知れない、、とか。
架空の小国の架空の言語(文字)の美しさと、その言語で書かれた小説に魅せられ、そこに夢を見た人達がいた。それが出版界事情という壁、そしてこの小国が他国を攻撃し消滅させられたという衝撃の事実の前に挫折する。しかもかの小説家は軍事政権の攻撃を支持する声明を発したとのニュースも。
全ては闇の中にあり、鬱々とした日常は「夢の無かった」殺伐とした現実の時間へ回帰する。それはもしや彼ら(彼女ら)のもう一つの(その美と出会わなかった)人生か、あるいは出会ったがゆえに味わう喪失の残酷さか。。
ラスト、壮一帆演じる翻訳家がかの国に行こうとスーツケースを引きながら訪ねてくる。そこは定年を前にただ一つ有意義な仕事を残す事に賭けていた出版社勤務(土居裕子)が引き篭もる部屋。そこにJKも居り、真実を見ようと決意する三人の旅立ちの絵で幕が降りる。
成立したかも知れないドラマの様相を想像力で補填したが、届かないものが残る。
歌わない土居裕子の芝居を堪能できたのは収穫ではあった。勿体ない観劇になった。