「売春捜査官」 公演情報 Last Stage「「売春捜査官」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2回目。
    2017年8月、「なんかやる制作委員会」による『空想ペルクライム/Les Nankayaru』が中目黒キンケロ・シアターにて上演された。脚本・演出の花奈澪さんはウサギの縫いぐるみを頭に被り一言も喋らない。(確か口が利けない設定だった)。高校生の青春モノで、好きな男子が苦しみ足掻いているのを救う為にラスト飛び降り自殺する。(彼女の中では自分が犠牲になることで彼の苦しみが軽減すると信じている)。何か哀しくて病んだ純情が忘れられない余韻。
    その時の好きな男子役・白柏寿大(しらかしじゅだい)氏が今回のゲストだった。185cm!!

    面白い。色々と考えさせられた。吉田翔吾氏は凄えな。有無を言わせない。勿論、丸山正吾氏も名アシスト。青柳尊哉氏が人気あるのはよく分かる。
    今作は照明がかなり重要で、ありとあらゆる工夫を凝らしている。素晴らしいセンス。プロフェッショナル。
    長渕剛の『乾杯』っぽいSEだったり、音入れも興味深い。
    花奈澪さんのジッポの火が点かなくて2回やってすぐに煙草の流れを放り捨てた判断力の速さ。そういうことだよな。正解を探すのではなくて、自らの動きで正解にする力。
    「女は命令なんかで動かんよ。」

    浜辺のシーンはThe ピーズの名曲、『日が暮れても彼女と歩いてた』を感じていた。

    何にもいらない もう他にはいらない
    彼女がまだそこにいればいいや
    日が暮れても彼女と歩いてた
    気がふれても彼女と歩いてた

    ネタバレBOX

    『熱海殺人事件』は昔、小説を読んで、仲代達矢の映画を観て、何が面白いんだかよく判らなかった。つまらない事件を捜査側が無理矢理壮大な大事件に仕立て上げるギャグぐらいに思い。舞台を岡村俊一版とカガミ想馬版で観て一応消化した気になる。もうこの系はいいだろう、と。(ただ、今思えば階戸瑠李さんの『熱海殺人事件~友よ、いま君は風に吹かれて~』を観なかったことが悔やまれる。彼女は翌年急逝し、それが最後の舞台となった。グラビアアイドルを演じながらもガチガチの役者馬鹿だった)。

    当時観て思ったのはつかこうへい作品は観る側よりも演る側にビンビン来るんだろうな、と。狂おしく自らの内面を空っぽになるまでゲエゲエ吐き出さなくてはならない。内臓から腹の腑まで燃焼し尽くさなくてはならない。本当に自分の奥の奥まで曝け出すマゾヒスティック・ナルシシズム。自己啓発セミナーさえも思わせる方法論。全てを空っぽにした先にあるもの。全部自分を出し尽くしたあとに残るもの。

    大山金太郎が上京して殺そうと思ったものは業〈カルマ〉だろう。自らの、そして生まれ育って見聞きし共同体に染み付いたもの。それを殺してしまわないことには自分は解放されない。無論殺したところで解放される訳もないことすら何故か知っている。それでもやらないわけにはいかない。それに対し李大全は愛した故郷から自死を求められた時、「愛してます!」と答える。憎むべき“業”に愛を告げる。“業”を心の底から抱きしめる。何となくつかこうへいの作劇の核が理解出来たような気がした。

    ※「アイちゃん、女ちゅうもんはそげん売春宿でもトップにないたいもんね?」という大山の台詞。
    『仁義なき戦い 完結篇』で宍戸錠が演じた晩年の大友勝利の名台詞を思い出す。脳梅を患い更に兇暴化。
    「牛の糞にも段々があるんでぇ。おどれとわしは五寸(ごっすん)かい!」
    巻き糞の世界にも序列がある、という意味。しかもこれは宍戸錠のアドリブだそうだ。

    大山は“弁償”という言葉に過敏に反応し、到頭殺しに至る。“弁償”という言葉に何が象徴されているのか?

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    2024/01/19 23:46

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