ネズミ狩り 2024 公演情報 劇団チャリT企画「ネズミ狩り 2024」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    劇作家樽原氏の新境地!?と思ったら過去作品の再演。初演は2008年王子小劇場、再演2011年3月(楽日2日前に震災)アゴラ劇場。後者のチラシは鮮明に覚えていたが、何と13年前とは。。
    今回はスズナリで短時日での上演との事で馳せ参じた所。チャリTの他作品とは一線を画する作り込み舞台(そば屋の店内)、抽象的な装置が一切ない。芝居も回想や他場面挿入がなく全て時系列に沿って展開する。笑い要素は若干入りつつも終始リアリズムでテーマ性もはっきり浮かび上がる。へーこんな戯曲を書いていたんだな、と敬服した。今回主役(女将役)を演じた女優が好演(割と近い過去二度程見た記憶)。青春事情舞台で二度見て覚えたおばさんキャラ笑わせ女優も配して、安定の舞台だ。元服役者の社会復帰の困難さ、世間の偏見、死刑制度の是非・・。
    芝居では被害者目線で加害者に極刑を望む側と、加害者の人生に寄り添う側の対立が、姉妹(女将とその妹)のついに暴発した口喧嘩の中で顕現する。度々訪れる雑誌記者を手厳しく追い払う若手(だがベテラン)そば職人にも溜飲を下げる。悪く描き過ぎとも言えるが、SNSやネットでは姿を現わす偽善塗れの下衆人格に肉体を与えた役として、私にはリアルな「存在」に見えた。

    事実愚かな世論が適切な被災地支援に積極的とは見えない政府を指弾せず、「言いつけに背いて」現地に入った議員を攻撃する誘導にまんまと乗せられる現実。こういう時いつも思い出すのが「未必の故意」で安部公房が描いた人間たち。利害の前には非合理を恥じないとある島に暮らす土着日本人の実態が日本人精神の「淵源」を抽出したようで興味深かったが、実は今の姿だった。。

    いま思い出した。アワード投票が、昨日まで‼︎ ウーまたやってしまった。順位は決めていたのでこのネタバレ欄に紹介しておく。

    ネタバレBOX

    1位 MyrtleArts「同郷同年 2023」
    2位 名取事務所「屠殺人ブッチャー/慈善家 -フィランソロピスト-」
    3位 イキウメ「人魂を届けに」
    4位 燐光群「わが友 第五福竜丸」
    5位 PARA/布施安寿香/和田ながら「祖母の進化論」
    6位 東京演劇アンサンブル「送りの夏」
    7位 シス・カンパニー「いつぞやは」
    8位 オイスターズ「きいて、はなさないで」
    9位 劇団俳優座「閻魔の王宮」
    10位 オフィスコットーネ「磁界」

    追記。
    今回の軸は時代(現在)と鋭く切り結んだ舞台(として迫ってきた舞台)、とした。ランクに入っていてもいい振い落とした公演は今回も多数。

    名取事務所は、年初の「占領の囚人たち」そして書き下ろし「ホテル・イミグレーション」が出色であったりヒット連発だったが一つに絞った。公演は2本とも秀作だったが2度目の観劇(新演出)となった「ブッチャー」に圧倒された。
    小品を集めたオムニバス系の優れた公演にも出会えた。「君といつまでも〜Re: 北九州の記憶〜」、「Mrs.fictions in 本多劇場」、feblabo「ホテル・ミラクル The Final」。
    メジャー系を理由に外した「ガラスの動物園/消えなさいローラ」、またKAAT「アメリカの時計」、新国立「エンジェルス・イン・アメリカ」。他に「ある馬の物語」、太陽劇団「金夢島」もインパクトあり。
    先鋭的、挑戦的、刺激的だった舞台に、お布団「ザ・キャラクタリスティックス」、チェルフィッチュ「宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓」、地点「騒音。」、SPAC「人形の家」、ゆうめい「ハートランド」、文学座「アナトミー・オブ・ア・スーサイド」、開幕ペナントレース「HAMLET |TOILET」、遊戯空間「吉良屋敷」、EPOCMAN「我ら宇宙の塵」ナイロン100℃「Don’t freak out」、KAAT「虹む街の果て」、あと赤堀氏の「日本対俺」もかな。
    小劇場演劇、ストレートプレイの良品、ここ風「チョビ」、ala「フートボールの時間」、Pカンパニー「会議」、トローチ「熱く沼る」、ワンツーワークス「アプロプリエイト」、ハツビロコウ「レプリカ」「ワーニャ伯父さん」、文化座「旅立つ家族」、昴「われら幸運の少数」ゴツプロ「ブロッケン」、ウォーキングスタッフ「クラブ」、俳優座プロデュース「検察側の証人」、ストアハウス「父と暮らせば」、劇団普通「風景」、ムシラセ「つやつや・・」二本立て、俳小「マギーの博物館」、青年劇場「お好きな場所をどうぞ」、PLAT「たわごと」。
    舞踊ではイデビアンクルー「幻想振動」、人形劇ではひとみ座「モモ」。
    配信は除外しているが、でなければ恐らくベスト10入りが、コンプソンズ「愛について語るときは静かにしてくれ」。あとはTRASHMASTERS「チョークで描いた夢」、渡辺源四郎商店「千里眼」。
    捨てられない性格は治らない...。

    追記の追記。
    個人的にこの年最大のトピックはナカゴー鎌田順也氏の逝去、そう思ってる人はきっと多いだろう。これからの人だった。主宰亡き後テント公演を敢行した水族館劇場の健在ぶりも嬉しいトピックとして記しておく。

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    2024/01/10 08:59

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