実演鑑賞
満足度★★★★
最初に風景が立ち上がるのが良い。語り出した女性の、言葉によって、人が使わなくなって寂れた「空港」が提示されると、そこに風が起きる。パリ・テキサスかバグダッドカフェの乾いた空気がふと香る、気がする。
四人の登場者が、モノローグでそれぞれ語る。最初の話者が言う。かつて日に何十機もが発着していたが、今は人の姿もまばらで、恐らくこの飛行が最後になるのかも、と仄めかし、人類が火星に移住してしまったか、人口が減ってしまったか、この「地球」を舞台ににぎにぎしく生を営んでいた人類は、舞台からほぼ退場したらしい。
他の話者が語った文脈は今思い出せないが、絶滅しかけた人類であってもそこに人が居れば生の営みがある。取るに足らないような小さなこだわりや感情、感覚が、どんな状況にあってもその人間が彼・彼女自身である事の不可分な要素である。その言葉を、彼らが紡いでいる、と見える。もちろん作者がそのような言葉を(凝縮された劇の言葉を)書いたわけであるが、批評的だ。日本がイケイケである事、日本人はスゲー存在である事、を前提にしなければ「その人」では居られなくなるとすれば、「彼自身」は何処にいるのか・・。
抗原劇場は二度目。過去一度観たパフォーマンスもどことなく見入ってしまう要素があったが、今作がより各テキストにまとまりがあり、各様の風景が見られた。