ゼンイとギゼンの間で  呼吸する世界。。 公演情報 エンニュイ「ゼンイとギゼンの間で 呼吸する世界。。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    最初に観たリアルな「会話/議論=会議」(の劇?)、そして神奈川短編演劇祭での人の動線の軌跡(線図)と現代的発語の奇妙なミキシングの実験、配信で観た超リアルな居酒屋会話劇(葬儀を終えて死者にまつわる噂の真相や本音激白的な)と、「色々試してるユニットなんやなあ」の印象。
    今回も初めて訪れる場所(SCOOLより狭い?)で雑多な舞台上にて、どんな具合に「いなされる」かと見始めれば、がっつり二時間超えのドラマのしっかりとある、構成された劇であった。照明も中々の変化をもたらす。
    とは言え空間の右端に居座ったギタリストがエフェクターやプロジェクター、それらの付属機器にとどまらず小物をいじくったりそれを叩いたり音ともいえぬ音を立てたりしており、「音」だけでなく光に干渉したり、壁のあちこちに貼られたり吊るされたりしてる物の内近くにあるものをはがしたり外したり、法則性があるのかないのか不明な動きを常にしている。・・って所は実験の要素だろうか。
    舞台ではできる役者たちがマジに演じている。
    後で聴けば本作はこのユニットのデビュー作品で、台本として存在するものを元に作る(言わば普通の)演劇であった。
    人が表面上繕っている己と、本音との間には、二種類のそれではなく薄さ厚さがあって故意と無意識のグラデーションもある・・そうした表現は中々(新劇俳優などには)難しく、微妙なニュアンスの表現と言えば最近では加藤拓也氏の舞台にそれを見るが、脚本がそれを要請するものである事は重要だし、より緻密な観察と想像力を求める要素があるだろう。
    本作では人物らが本音と分かる激情が露出するが、それに至る人間感情の「微妙な線」を示唆する時間も、観客の目を釘付けていた。不思議に心地よかったり不快だったりするバランスと、混沌も含めて、細部に表現を届かせている事の演劇のレベルというのも変だが質的な価値、早い話が「よく言ってくれた」思いがじわりと湧いてくる。そして少なからず揺さぶられた。
    世代的には四十歳という色んな意味での分岐点を迎えんとする世代の社会人感覚が基調。経済的自立と芸術の道との葛藤、効率重視社会とアートの関係、そのアートの営みも「表現したい」と「売れたい=知られたい」との間で引き裂かれる葛藤が常態である事など、主人公の属性もあってアートの側に常に暗雲が垂れ込める。が、単純な二項対立の生成と解消といった筋に本作は流れず、対立の軸が動く。理不尽なまでに動き、最終的に何が収まり所であるかも分からない。だが、作者の「最後に本音が出れば本当の解決が見える」(といった芝居は多い)なんて事にはならない、という「本音」は漏れ出ていた気がする。そこにも妙な説得力がある。

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    2023/12/30 23:03

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