満足度★★★★★
心の旅の果てに出会うもの
全編に流れる、美しい詩歌。
役者の方々の魂を込めて歌い上げる、詩の言葉たちが、
まるで、満々と水を湛えた川のように力強く、流れて行きました。
その滔々とした流れの中に、心をからっぽにして、
ただ、ただ、身をゆだねているうちに、
今、聞こえている言葉ではない、「何か」、
今、見えているものではない、「何か」。
心象の川底に潜み、こちらをじっと見つめている「何か」。
その存在に、気づきました。
それは、
幼い頃抱かれた、母の両腕のようであり、
同時に、
どこまでも追ってくる、死に神の剣のようでもあり。
この舞台はまるで、役者と観客との、心の旅。
息苦しいまでの、厳しい旅路。
今まで、直視することを避けてきた、
この世に実在する、地獄との対面。
主を亡くした靴たちの行進。
自らの生も死も、見失ってしまった、彷徨う魂たち。
「愛してる」・・・想いの限り伝えても、決して返っては来ない、
「愛しているよ」。
そんな、永い永い、哀しみの旅の果てに出会うもの。
澄んだ瞳で空を見上げる、少年と少女。
その視線の先に舞い上がる、青い鳥たちの群れ。
そういえば、君たちは、この旅の始めから、
わたしたちのそばに、いてくれたよね。
なぜ、今まで気づけなかったんだろう・・・
この舞台を描いてくださった皆様の想いを
まだまだ、充分に受け取れていない自分が
とても、申し訳なく感じています。
けれども、言葉や、視覚を越えた、
きっと、心でないと観ることのできない世界の存在に
気づかせてくれた、意義深い作品でした。
演じられた皆様の表現力の深さ。
この作品に向けた情熱。
皆様が観客の心に残した、
まるで、飛翔する鳥たちの影のような軌跡は、
きっといつか、光の先へと、導いてくれることと思います。