ルーティーン247パラノイア 公演情報 シネマ系スパイスコメディAchiTION!「ルーティーン247パラノイア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    妄想という名のルーティーンワークを繰り返す。
    ふとした瞬間に思いついた妄想をリアルタイムで具象化されていく光景が面白く、終盤の『種明かし』の高揚感が心地よかった。
    ”シネマ系”と団体の意向を謳っているだけあって、劇中で流れる映像にこだわりを感じ、時間制限を設けて演技をする一場面はスリリングで楽しめた。導入音楽もセンスが良い。

    ネタバレBOX

    壁面に取り付けられたいくつかのドアー。手前には迷路のように配置された白い箱、その奥にテーブルと椅子、その真上(二階)にも同じテーブルと椅子、上手側にもいくつかの白い箱が置かれたカウンターという抽象的な舞台美術。

    本編がはじまると迷路のように配置された白い箱はコンビニの棚で、白い箱のカウンターはレジであることが判明する。物語はコンビニに訪れる常連客らの光景を、このコンビニでバイトをはじめて一週間経過した宇佐美まる美の目線で描いていく。

    このコンビニには毎日ろうそくを買いに来る怪しげな女や、毎日5時にトイレを借りにくるおっさん、毎週水曜日にお菓子を1万円分買いにくる男などがおり、店長や、周りのスタッフは常連客らの行動パターンは全く同じである。という。

    どうして毎日同じ時刻に同じモノを買って行ったり、毎日同じ行動を繰り返すものなのか。疑問におもうまる美は彼らにあれこれと勝手に理由をつけて、毎日箸を7膳もらう客は、大家族でひもじいおもいをしているだの、毎日連れてくる女が違う男はメロドラマ風のドロドロの不倫をしているだの、毎日カレーヌードルを買いにくる客は本当はウルトラマンだの、と妄想しまくるそれが劇中劇として繰り広げられる。単体ではどれもこれも面白いのだけれども、如何せんひとつひとつの尺が長く、不要だと思われるエピソードもあったような・・・。しかし、コンビニという不特定多数が出入りする場所での群像と捉えるとそれもアリなのかなぁ、とも思えるので甲乙が点け難い。

    さて物語は中盤、娘の妄想を止めさせるためにまる美の父親が登場し、コンビニでたむろするギャル&ギャル男らの仲間になってまる美を監視しようとする。イカツイスーツ姿の父親が、見た目もしゃべり方もギャル男になっていく様が面白く、この3人の関係性もいい。

    しかし、父の涙ぐましい(?)努力もむなしく、まる美の妄想はエスカレートしていき突然現れた謎の男から「このまま妄想ばかり見ていると、妄想の世界から抜け出せなくなる。現実を確認するように。」と指示を受ける。

    彼女が信じていたい現実=妄想が歪みはじめると彼女の知らない『本当の現実』が表出する。その現実とは、ろうそくを買いに来る女は新興宗教のスタッフで、箸を7膳もらう客はその教祖、毎日違う女を連れてくる男は子供向けテレビ番組のプロデューサー、カレーヌードルを買いに来る客はデキ婚を迫られる男など、彼女が妄想していた常連客たちの本当の姿…。

    真実を知った彼女に、ろうそく女と箸男らは『妄想教』に彼女のすべてを妄想に満たそうとおびき寄せる。頭を白い布で覆い、白いマントを翻した、没個性の信者たちの光景は異彩を放つ。

    そこへ「現実を確認するように」指示した謎の男が再び現れまる美を呼ぶ。
    まる美が目を覚ますと、そこは病院。謎の男は彼女の担当医で催眠療法を使って妄想の世界から現実へ引き返そうとしていたこと、彼女がコンビニで働いていたことも夢であったことが打ち明けられる。

    無意識下で上塗りされていく妄想、夢のなかをさ迷う主人公、細切れのエピソードが終盤で収束していく構成、スタイリッシュな映像・・・完璧でしたが、何だか惜しいという印象がぬぐえませんでした。例えば円形の枠組みのなかでループするなど『ルーティーン』であることを生かした演出を施したり、もう少しリズミカルに物語が展開したり、もう一捻り利いた笑いが取り入れられるとより洗練されていきそうな気がします。

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    2010/07/12 03:41

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