受付 公演情報 名取事務所「受付」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    不条理劇の醍醐味
    本来なら「受付」という機能は外部と内部とを繋ぐ橋渡しの役割だ。なのに、ここでの「受付」はその機能をはたさず男の要請を無視してひとりの意思を持った女性として自立してしまう。受動的な立場を捨てて次々と要求を出してしまう。その境界はあっちの世界とこっちの世界にも属さないニュートラルな位置にあって、尚且つ「受付」の先には末恐ろしい世界が手をこまねいて待っている情景が可笑しかった。

    シュールで滑稽でブラックコメディな世界。

    以下はねたばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    男はヨシダ神経クリニックにヨシダ先生の診察を求めて来る。受付の女は男の話を聞かずに机のうえの筆立てをどこに置くかで迷っていた。その筆立ての場所を考えながらも、女は男の家庭環境を聞き出す。男には妻と4人の子がいると知った女は「そんなに子供を生んで世界の食糧不足をどう思っているのか」、と咎める。

    元々、神経を病んでる男は気丈に言い返すという行為が出来ない。そこに付け込むように受付の女は次々と、パレスチナ難民援助協会への寄付金やら、アイバンクに角膜を寄付する件やら、献体を扱う白菊会やら、安楽死協会やらの福祉団体を次々に紹介されて入会を勧める。男は当初は嫌がって断るも、女の善意という大義名分のもとに、言い負かされ身ぐるみはがされてしまう。

    そんな受付の対応に、いつになったらヨシダ先生に診察してもらえるのか不安になり「受付」奥の診察室に行ってみるとそこには何もなかった。男はやっと自分が騙されていたことに気づくが、女は尚も言い放つ。「ここのビルには37の受付にそれぞれ一人ずつ女の子が座っていて貴方を待っていた。貴方はもうここにしか貴方の希望はないんです。」

    終盤、ヨシダ先生が手前の部屋から入ってきて、「しかし暇だなー、どうしてここには患者が来ないんだ?」すると女は言う。「宣伝や広告は出しました。そのうち患者は来ますから気長に待っていてください。」

    そう・・・、患者の殆どはここを経てビルの中にある寄付から安楽死までのフルコースに導かれてしまう手はずだ。

    二人芝居だからこそ面白い。人間の弱みに付け込んだ不条理劇だが、コントのような会話は実に楽しかった。さらに女は、各階の受付の女がみんな独身だと打ち明ける事によって、男が彼女らに興味を持つはずだと思い込み、男を曖昧にさせてはぐらかせ明確に拒否できないようにさせてしまう。それが男をのっぴきならないところへ引き入れてしまう結果となるのだが、そのやりとりが恐ろしくも可笑しいのだった。

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    2010/07/10 16:45

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