なにがたりない 公演情報 演劇企画 どうにもならない毎日に光を。「なにがたりない」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    青春のほろ苦い1ページを綴った物語。どこにでもありそうな光景を淡々と そして瑞々しく描いている。それは 同世代には共感をもって、その時期を過ぎてしまった年代には懐古が感じられるのではないか。

    時間は流れすぐに消えてしまうが、写真はその瞬間を切り取ってあった事(事実)を残すことが出来る。好きでなくてもいいから、居てよかったと言ってもらえたら嬉しい、そんな切ない心情を繊細に描く。キャストは総じて若く等身大の男女カップルを演じているようだ。

    描かれているのは、外見的なコトの善悪といったものではなく、表現し難い内面的(心情)なことー好きだからこそ 信じられなくなったら苦しい思いが加速するーなんとも切ない純情。その理屈では説明できない恋愛物語を上手く表現している。
    (上演時間1時間30分) 

    ネタバレBOX

    舞台セットは暗幕で囲い、ほぼ中央に横長のソファとカラーBOXがあるだけの簡素なもの。主人公 写真家志望の悠作の衣裳は白っぽく、後景と相まって見るとモノトーンといった感じで、それがフィルム写真と重なるようだ。表されているのはバイト先の写真店、それぞれのカップルの部屋といったところ。

    悠作は 高校時代に思いを寄せていた女性と付き合いだし、幸せを感じていたが、その彼女が偶然 高校時代の元カレと出会ったことを知り、心穏やかではない。一方、悠作はバイト先の店員で大学の後輩に慕われているが、そのことに気が付かない。さらに同じ大学の男女の恋愛が絡み、それぞれの思いが何となく ずれ恋が実らない。そんな もどかしさが少し甘酸っぱく描かれている。

    大きな事件などが起きるわけでもなく、大学とバイト生活が淡々と紡がれ、その中で青春期の それも恋愛という断片を上手く切り取っている。意識しなければ「時間」というかけがえのない、後戻りできない時を無為に過ごす。その瞬間瞬間を大切にして 愛おしい人と過ごしたい、が 一度不信感が芽生えると どうしょうもなく不安になる。一方受け入れられない恋、それでも一緒にいたいという抑えがたい気持が痛いほど伝わる。

    ラストは、結ばれなさそうな男女が新しい恋を実らせるような予感。人はどんなに苦しくても立ち止まらない。人に出会い、新しい何かを受け取り与えることで、止まった時間を再び動かすことが出来る。そんな前向きなラストシーンにホッとする。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/12/02 14:46

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