芥 公演情報 護送撃団方式「」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    人間だってリサイクル。
    気鋭の役者が集まり立ち上げた団体の旗揚げ公演。公演毎に作・演出を招くスタイルだそうで今回はダムダム弾団の藤森俊介さん。藤森さんは人間の負の部分と砕けたギャグが持ち味の作家さん。
    あらすじ書きからひょっとして人間がゴミに例えられるとか、人間がゴミになるとか、そういう方向になるのかしら。なんて浅読みをしていたのだけれども、あながち間違いでもなかったようで、端的に言って利用価値のある人間とない人間が壁で隔てられている話だった。

    ネタバレBOX

    浄御原の南に位置する島『浦倭』には犯罪者や難民などいわゆる『はみだし者』が多く収容されている。辺り一面は高い壁で覆われており、外に出ることは許されない。

    彼らは主に、浄御原から運搬されたゴミ処理作業を行っていたが新システムを開発した浄御原は突如としてゴミを排出しなくなり、彼らのやるべき事はなくなった。

    そんな折、ある男が浦倭に乱入したと、浄御原の管理局から一報が入る。
    どこからともなく風のように現れたその男は『悪太』といい、シリアルキラーのような狂気と凶器を併せ持ち、この世の終わりのような顔をして叫んだりがなりたてる。彼はどうして血相を変えてここに乗り込んで来たのか。なぜそんなに怒り狂い何を目的としているのか、何となく分からない・・・。

    そんなことがこの芝居の中にはいくつかあった。

    例えば葛という男。この男は悪太の兄であり、葛は「ゴミをなくすのがオレの仕事だ」というのだが、新システムの開発でなくなったハズのゴミを、なぜゴミ自身が生み出さなければならないのか、その理由やあらましがわからない。悪太が不幸を運んできたとか!?悪太も悪太で兄を追ってせっかく(?)浦倭に乗り込んできたのだから、本音を合うなり喧嘩するなりガチンコ対決すればいいものを、浦倭に住む善良な市民らにいきなり襲いかかったりするものだから、一体どんな気持ちを抱けばいいのかよくわからなくなってしまった・・・。
    悪太のように『使えない人間』をゴミとして処分するのが葛の本来の目的なのはわかる。わかるのだけれども、仮にも兄弟なのだし、そうすることへの戸惑いや葛藤や苦悩はないものかな、とおもった。浦倭に住む人々の、ゴミ人間らしい言動もなく、私には彼らは仲間や兄弟を大切にするちょっとドジな気のよい人たちにしか見えなかった。

    後半、兄が「世界を浄化するために」作った人間兵器で世界を破滅させようとするのは何だかなぁ・・・。

    悪太も兄も正義がないという視点は面白いけど「ゴミはゴミらしく生きろ。」って台詞も何だかなぁ・・・だった。

    とはいえ、鎖で繋がれたチープでサイヴァーチックな人間兵器のアイボは映画『鉄男』みたいでそそられた。笑

    浄御原を東京都、浦倭を夢の島に隠喩して、使える人間と使えない人間に『分別』し、後者を『ゴミ』だと揶揄することは、人をモノ扱し平気で切り捨てる現代社会を風刺するメッセージとして伝わってきた。
    ただ、物語にスピード感がなかったことが、殺陣の迫力を圧迫してしまったような印象を持ってしまったことも事実。
    上演時間と1シーンごとの時間をもう少しタイトにしたら変わるのではないかな。それから、ダンスの分量はもっと多く取り入れてもいいかな、と。動きにキレがあって恰好よかったので。

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    2010/07/07 06:05

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