SHELL 公演情報 KAAT神奈川芸術劇場「SHELL」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「青春ファンタジー」と銘打たれてはいるけど、その言葉に当てはまっているのは序盤と終末部のみで
    どちらかというと難しいテーマを2時間ぶっ通しで貫く硬派な作品。

    どちらかというと観る側に何かを投げかけているというよりは、演じる側がこの作品を通過して何を感じて、
    得るのかにフォーカスした潔い作品だと思う。

    ネタバレBOX

    私立の「静水学園高校」に公立から赴任してきた担任がある時を境に、学校から姿を消してしまい、
    クラスメイトたちが今後について話し合っている場面からスタートする本作。群像劇的な要素が
    あるかと思いきや、物語の中心は希穂(石井杏奈)と未羽(秋田汐梨)を中心に展開していく。

    どうやら担任は私立校の生徒向けの「取り繕った顔」と「本来の自分の顔」のギャップに悩む中、
    ある受け持ち生徒からそのことを指摘されたことで消えてしまったらしい。とあるラジオ番組に
    投稿された担任らしきメッセージには「今は一人一人に向き合っています」といった意味深な
    言葉が書かれていた……。

    話が進むうちに、希穂は別の他人と交感し、つながることのできる能力があることが分かってくる。
    その事実を知っているのは、誰が希穂とつながっているのか一目で見通せる稀有な能力を持つ未羽
    だけだということも分かってきて、さらに物語は難解かつでも大切なテーマに進んでいく。

    脚本が倉持裕なのでキュンキュンしたり、切なくなったりするようなエピソードはほぼなく、ひたすら
    「他人のことを“知る”もしくは“知った”とはどういうことか」「人と人とはどのような関わり方ができ、
    また理想的なんだろうか」という問いかけと仮説じみたものをずっと繰り広げていくタイプのもので
    そういうことをずっと、そうでなくてもチラチラ考えているような人にはグサグサ刺さるんだろうなって
    気がする。

    個人的には、自分に告白してきた咲斗に、希穂が恐れていることとして「自分が咲斗のことをどんどん
    隙になっていった場合、自分がどの位まで変われるのか不安がある」と言っていたけど。

    これは半分正しくて半分違っているなと。おそらく希穂は「自分が他人との関わりによって自分ではない
    自分に意識的無意識的に書き換えられてしまうことが恐ろしい」んだと思う。この感覚ってすごく良く
    分かる。大人でもそう理解できるので、自分というものを考える時間が多い高校生には切実な予感はしてる。

    自分の中にどの位他人を受け入れるか、これは結構難しい問題で。

    盲目ゆえに人を徹底的に拒絶する長谷川や、人当たりは一見よさそうだけど「現代社会って“関わり”を強制的に
    押し付けてくる」とラジオで放言して炎上した陸は、第三者的に見て「自分の理想ってなんかこれじゃないな」
    感がすごい一方、

    希穂みたいにいろんな人を受けいれちゃって、あげくに自分を失ってしまうタイプにもあんまり共感はできない。

    なんかこの作品は中心にいる子たちより、恋に青春に遊びにと卒業までの残された時間を謳歌しきってる子たちの
    方がすごい幸せそうにみえる……。それも含めて「見えちゃう」子ってやっぱり周囲とどこか浮いちゃって
    生きにくいんだろうなって感じた。

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    2023/11/20 00:16

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