皇国のダンサー 公演情報 劇団黒テント「皇国のダンサー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「亡国のダンサー」(2017.3)から6年半。この年は年末に坂口氏作「浮かれるペリクァン」と劇団公演が二つもあり、春にはハット企画「シェフェレ」、年明けには滝本女史による「4.48PSYCHOSIS」と陰なる黒テント応援団にとっては嬉しい一年だった。
    ファンとは言っても創立者佐藤信作品との縁は薄く、最初が「メサスヒカリノサキニアルモノ、若しくはパラダイス」(松本大洋作・斎藤晴彦演出)初演と再演で幸運な出逢いと言えた。次に観たのが佐藤氏作演出「絶対飛行機」。「亡国」はそれ以来だから15年。座高円寺では演出作品を2本程観たが、何気に抽象度は高い。今回も覚悟して臨む。
    「亡国」はその空気感、絵面が魅力であった。物語の解らなさは渡辺えり子作品並みだがこちらは大きな波長での演劇的ドラマ性がある。佐藤作品は印象的な断片が連なるが詩のような構成で頭脳を刺激するが骨太さ(身体的躍動?)は感じない。読み取り力の問題だろうか。
    「絵面」と言えば服部吉次氏の存在は記念物指定ものである。(演出も間違いなくこれをどう活かすかを考えたろう。)外見からの観測だが齢八十になりなむとする小身が軽やかにステップを踏む。コールでの礼の絶妙な間合い(希代の一座が鳴り物入りで芝居を打ったような、団員の面映い顔も仄々として来る送り出しであった。)

    ネタバレBOX

    アングラの教科書に載る状況劇場(唐)、天井桟敷(寺山)、転形劇場(太田省吾)そして黒テント、前者二つはテキストの上演が多く、テキストに劇的世界が書き込まれている(唐作品はその演出形態を縛りそうだが)が、後者の太田省吾は舞台上演の思想を体現するためのテキストを書いた人だ、と見て取れるのに対して黒テントは捉え所がなく定義付けが難しい。流転の劇団であり様々な試みを行いその時々のムーブメントに関わった者は多様に存在する。だが劇団本体はイワトでの試みから撤退して雌伏の時を経てしぶとく芝居を続けている。独特の舞台世界を今後も生み出してほしいが流浪の芝居屋の本姓は「完成」を期する事は無いものと踏んで今後も動静を見せて頂こうと思う。
    (今回は劇団総出という事だったが平田三奈子、内沢両氏が体調で降板、久々の立ち姿は観たかった。)

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    2023/11/15 12:17

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