実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/11/11 (土) 11:00
座席1階
前編の4時間に加え、今回の後編も4時間余り。観客も大変だが、役者は精神的にも肉体的にもさらにハードだったろう。後編は3場で幕間の休憩は10分だけ。トイレに行くのがやっとという中で、濃密な演劇を堪能した。前編よりもはるかにブラッシュアップし、迫力も増した。長時間だけに登場人物それぞれの苦悩や思いが丁寧に描かれていた。
レズビアンという性的少数者がテーマの一つ。高校演劇部の顧問だった先生がレズビアンであることのカミングアウトと共に演劇の未完成台本を残して死亡。演劇部員だった4人の女性が新たなテキストを加えて戯曲として上演しようとする物語だ。
物語の柱は登場人物の人生と人間関係。演劇は言葉を舞台で紡いでいく芸術だと思うが、タイトルにある「ことばにない」というフレーズのように、言語化できない思い、考え方なども絡み合わせて映像的な舞台に仕上げてある。
演出は前編に比べて格段に進歩し、長丁場なのに客席を飽きさせることはない。まず冒頭のシーンがとても印象的だ。薄いカーテンの幕を効果的に使い、照明は単純化。歌や踊りを盛り込んで会話劇を補完するという荒技もあった。演出的な意図を持ってカーテンに言葉を映し出したり、早変わりの衣装も効果的だった。中心をなす女優たちの熱演もいい。これだけの長丁場で、しかもかなりの長せりふが乱発されていたから、俳優たちの苦労が偲ばれる。
だが、これらがすべて、この舞台を成功に導いた要素である。主宰の劇作家、宮崎玲奈は後編を「物語を書いて死ぬという選択肢しかないと思いながら」後編を書いたという。煩悶するがごとくの戯曲を俳優たちは見事に支えて見せた。
蛇足だろうが、踊りはよかったが歌はちょっと。ミュージカルでないからそのあたりを求めすぎてはいけないが、あえて歌わせなくてもよかったと思わないでもない。
前編を見てない人でも楽しめる。ただし、覚悟を持って劇場に行く必要がある。