アメリカの怒れる父 公演情報 ワンツーワークス「アメリカの怒れる父」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    みる前は韓国系アメリカ人の父親の話かと思っていたが、違った。ウォール街の仕事でクズになり、仕事も失って、麻薬とアルコールに身を持ち崩したビル(奥村洋治)。息子のウイル(米澤剛志)もやはり証券トレーダーらしいが、虚業に嫌気がさして、アラブ系の妻ヘバ(北澤小枝子)をのこし、スーダンの支援活動へアフリカに行ってしまう。題材としては重い。韓国で上演した時、客席からしじゅう笑いが起きたというが、ホント、どうしてだろうか?

    ネタバレBOX

    息子がアルカイダに処刑され、その映像が全世界にながれるという衝撃的な事件。ビルは再び薬と酒に逃避し、周囲の忠告にも耳を貸さず、無為に閉じこもる。その自閉的状況を、若いビルの幻(金光柊太郎)との対話で芝居として立ち上がらせる。また若いナンシー(東史子=彼を振って、デイビッドに走ったヒッピーの女性)、死んだデイビッド(山下雷舞=髪を上半分だけ金髪にして目立つ)も幻になって現われ、彼の錯乱、堂々巡りは深まっていく。

    しかし、これは物語。実話の父親マイケル・バーグは、息子を殺したアルカイダの男達よりも、報復戦争にまい進するブッシュ大統領を批判し、声を上げた。「息子を奪った殺人者たち以上に、私は命を終わらせるための政策を立てる人々を非難します」という手紙を、息子が殺された直後の、ロンドンでの反戦デモに送った。舞台が終わった後の帰りに、観客はその手紙を受け取り、舞台とは別の感動を味わうことになる。
    劇で殺されたウィルが「一瞬だけど、僕は彼らと友達になった。お互いにのぞまないことをせざるを得なかった」という。背景にある事実に粛然とした。

    私も9・11後に、「平和を求める9・11遺族の会」だったか、報復戦争の中止を求めて活動する遺族(歌手だった)を取材したことを思い出した。まさにアメリカの良心ともいうべき人たちだ。その良心の声が、こうして日本でも伝えられることをうれしく思う。いまガザ攻撃に狂奔するイスラエルの中にも、こういう良心の声はあるはずだが、日本のメディアには出てこない。

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    2023/11/05 19:29

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