実演鑑賞
満足度★★★★
夫(佐藤銀平)が失踪して一年、その空き巣に男(寺十吾)が入り込む。男女(野々村のん)が慣れたところで夫が現われる。さて、彼らはどう選択するか。何度も劇化された設定だが、この舞台は、シチュエーションを火山噴火の大災害後の避難住宅に設定し、「峠のわが家」と「浜辺の唄」という類似のメロディをもつ曲を絡ませて、小劇場エンタテイメントにまとめている。
こういう芝居ではもうベテランの域の横山拓也の脚本はずいぶん無理矢理の物語を会話の妙で引っ張りながら面白く見せる。見せられてしまうから、うまいのである。
こういう芝居では役者も重要なのだが、座組もユニークで作者は大阪(もう東京といっても良いが)の横山、俳優で出ている名古屋の小劇場作家(此も東京での活動が多くなった)佃典彦、それに演出も俳優も、の者寺十吾。主宰女優の野々村のんは青年座。演出の五十嵐明は青年座の役者(演出も時々)。バラバラで、結局それがこの異常事態以のドラマを生かしている。特に演技はメインではない寺十吾と佃典彦を脚本がうまく生かしている。佃は、ドラマに介入してくる第三者という無責任な役柄を快演して、この戯曲を支えている。最も今風な人間である。
面白くは見られる小芝居で、劇場満席は喜ばしいことだが、特異な設定なのに、横山らしいコクがない。だからドーだっていうの、懐メロじゃだまされないよ、というところもある。