或る夜の 公演情報 劇団芝居屋かいとうらんま「或る夜の」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    説明や当日パンフにも記されているが、地下鉄の最終電車を待つホームでの不思議な出来事。地上からは見えない地下鉄のホームに閉じ込められた人々の、その外見から伺えない心の「ひっかかり」が交差するシュールな物語。役者陣は、見えない心を上手く体(表)現する好演。

    謎の男が一人ひとりの心に語り掛ける。人生の歩みや目標に疑問や迷いを抱き、前に進めない人々へ 厳しくそして優しく寄り添うような描き方。閉じ込められた地下鉄ホームという密室(空間)状態、そして終電から翌朝の始発迄という数時間に紡がれる濃密な会話。と いうか心内の彷徨といった内容だ。

    登場人物(職業)の設定が妙。一人ひとりの心情吐露がリアルで 共感してしまう。地上から見えない地下鉄、それに準えて 外見から何を思い考えているか解らない人間の本心を炙り出す。当日パンフに敢えて 回収しない伏線もあると。すべて答え合わせをするような舞台ではなく、「楽しく思考を巡らして」ほしいとある。そう言えば、物語でも その時々で自分で考え選択をしてきている、といった旨の台詞があったなぁ。
    (上演時間1時間20分 途中休憩なし) 10.9追記

    ネタバレBOX

    舞台美術は、地下鉄ホームを思わせる大理石風の円柱と点字(視覚障害者誘導用)ブロックというシンプルなものであるが、状況設定には十分。客席側が線路ということで、ホームに閉じ込められた人々を俯瞰するような。冒頭 薄暗い中で謎の男を中心に、それぞれの人の顔をスマホのライトで色々な角度から照らし出す。勿論 怪しげな雰囲気を漂わすこと、登場人物の心を 色々な角度から覗き見るといった比喩を重ねたよう。まさに演出の妙。

    終電を待つ人々、突然システムダウンでホームに閉じ込められてしまう。外部と連絡が取れず 不安になり右往左往する。1人の駅員が駅事務所へ連絡しているが…。人々は、週刊誌の記者2人(先輩男と後輩女)、会社員、フリーター、主婦、女経営者、劇団員、そして会社員(日替わりゲスト)と 職業も年齢も違う。

    謎の男が現れ、夫々が抱える希望・諦念・悔悟や性格について話し出す。いや 謎の男の姿を借りた自分(幻影)と向き合う。謎の男は、向き合った人と関わり…例えば 会社員の学生時代の教師、女経営者のパートナー、主婦が苛めた同級生になり、思いを吐露させていく。そして時には厳しい指摘をする。週刊誌の男記者は、社会記者を目指していたが、今ではゴシップネタの記者に甘んじている。時事ネタをメモし、いつもカメラを持ち歩いている。

    謎の男が凶悪犯に仕立て上げられ、縄で縛りあげられる。その様子をカメラに収めようとするがシャッターが切れない。今の仕事に甘んじ新たなスタート(シャッター)が切れないよう。他にも会社員のカフェ経営の諦め、女経営者と不適切なパートナーとの関係、虐めと悔悟、といった呪縛に囚われている。謎の男が縄から抜ける=呪縛からの解放といった描き。人は 必ずしも思い描いた通りには生きられない。また、夜中にバイトしているフリーター。時間通りに出勤しなければ という責任感(呪縛)、その柔軟性に欠けた息苦しさからの解放も…。人は いろんな思いに囚われ、それでも生きている。

    SFのような雰囲気もあるが、もっと人の心の中を冷徹に見つめた心象劇といった印象だ。そして始発電車で新たなスタート(希望)が、そんな優しさが感じられる。
    ちなみに 伏線回収について、システムダウンの原因は何だろう。そんな目にあったら怖い。もう1つ、日替わりゲストの会社員は、どんな役割を担っていたのだろうか。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/10/07 18:56

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