切り裂かないけど攫いはするジャック 公演情報 ヨーロッパ企画「切り裂かないけど攫いはするジャック」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ヨーロッパ企画が元気に本多に戻ってきた。コロナ終焉を感じる。昼間から満席。
    今回は周年公演ということもあって、新しい素材はミステリ劇の「推理」である。
    いわゆる、ミステリ劇は、ドイル・クリステイの昔から、三谷幸喜に至るまで、突っ込めば、いくらでもヘンなところがある。ミステリ劇は強引にへりくつを通して犯人を上げ、正義の勝利にしてしまうのだが、そこを盛大に突っ込む。
    時代は原点に戻って19世紀末のロンドン。ホームズ誕生の頃。袋小路の街を密室に少女誘拐事件が起きる。袋小路に面した商店や町の人びと、零落貴族やスコットランドヤードの刑事、浮浪者も現われて、事実検証もそこそこに次々に事件を推理する。それぞれの証拠も推理も往年のミステリ・レベルで他愛ないのだが、そこをお互いに突っ込む。良い芸人総出の昼間のワイドショーのように面白い。常時十人ほど出ている俳優たちも動きと話の流れが速いので、大車輪である。三分の二はこの消失事件で、この事件はロンドン名物になって、商店の一つは事件を掛ける「ジャックシアター」に看板を掛け替え、誘拐ショーをやって当たったりする。収拾がつかなくなったところで、事件の大陰謀が明らかになり・・・といったところからはこれも同時代のジュール・ヴェルヌ風の話になるが、ここはあまり成功していない。2時間。
    袋小路のセットがよくできていて、現実にロンドンへ行くと今でもこの手の路地がたくさんある。いかにもヨーロッパ企画らしい大仕掛けのセットで見せるシーンもある。
    この劇団を見ていて、いつも、こんな劇団が一つや二つ東京にあっても良いんじゃないかと思う。強いて上げればテアトルエコーとかNLTだろうが、ここほど団結力と集中度がない。ここは作者の上田誠と主要俳優を中心に、みなでこういう芝居を楽しんでいる。(まぁ内実はそうでないのかも知れないが、苦しさは客に見せないで笑わせてしまう。小屋者の意地がある。)さすが文化都市・京都、見上げたものである。毎年のお祭りを楽しむように、来年の東下りを楽しみにしている。

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    2023/10/05 14:39

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