裂躯(ザックリ) 公演情報 乞局「裂躯(ザックリ)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    親を恨む若者同盟
    ここ何作かちょっと物足りなくて、作者の身辺の変化(結婚したり、子供ができたり)と関係があるのかなんて余計なことまで心配したが、今回はなかなか面白かったのでひと安心。
    もともと暗く歪んだ世界観が作品の特徴だったが、今回は妙に明るくはじけたところもある。
    作品世界が独特なので、以前は公演チラシにあらかじめ状況設定を詳しく書いたりもしていた。今回は劇団のホームページに、短い小説形式でいわば物語の前日談が掲載されている。

    ネタバレBOX

    親に恨みを持つ青年男女の同盟とでもいうか、そんな集団が古い民家を根城にして共同生活をしている。メンバーの一人が両親に猛省を促すべく、彼らをアジトへ拉致してきたのがことの発端。

    客席を二つに分ける和風の舞台装置が一種独特。渡り廊下のようでもあり、縁側のようでもある。障子戸に人影が映ったかと思えば、障子戸の紙の部分を取り外すと、今度は木の枠組みが座敷牢にも見えてくる。

    最初は拉致された両親、特に父親の反応を見て、ドメスティック・ヴァイオレンスの家庭かと思ったが、実はそうではないらしい。共同生活をする男女の行動を見ていると、むしろ自立できない若者たちがその原因を親に求めて、逆恨みしているようにも思えてくる。

    若者たちの共同生活ぶりにはちょっとカルト集団の匂いも感じるが、しかし教祖的な存在がいるわけではない。自分たちをブラピとかMJとか外国ふうのあだ名で呼び合っている。場面によってあちこちの方言をしゃべっていたのはどういうことなのかよくわからないが、集団の異様さを示す効果はあったようだ。

    人間関係がうまく築けない彼らは当然ながら異性と付き合ったこともない、童貞と処女ばかり。両親を拉致してきた娘はそんな中ではむしろ行動力があるといわなければならない。母親の不倫相手を見つけ出し、彼と関係を持ち、結婚話にまでこぎつける。動機は親への復讐だったのかもしれないが、怒りを行動に変えることで自立の方向が見えてきたようにも思える。不倫相手を仲間に紹介する場面では、まるで彼のライブステージのようなすっとぼけた演出で、周りからは囃したてたり励ましたりの声が飛ぶ。そういえばミラーボールも天井から降りてきた。ふつうなら深刻なストーリーが展開するところを、ちょっとシュールでコミカルな描き方になっているところが、これまでにない作風の変化ではないだろうか。

    結局、拉致された両親が解放されるわけでも殺されるわけでもない。作者が描きたいのはそういうストーリーではなく、特殊な状況を設けることで、親や家族について感じるあれこれを顕在化できればそれでいい、ということだろう。

    テーマ的なものとは別に、役者陣の演技も見所だった。両親(井上裕朗、石村みか)と娘(中島佳子)、青年男女(石田潤一郎、三橋良平、河西裕介、岩本えり、加古みなみ、笹野鈴々音、墨井鯨子)、不倫相手(下西啓正)、その妻(西田麻耶)、偶然巻き込まれた建築事務所の男(佐野陽一)。

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    2010/06/21 04:17

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