実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/08/29 (火)
赤坂RED/THEATERにて 日穏-bion-『オミソ(2023)』を観劇。
老舗味噌屋が舞台の家族ドラマ。劇場に一歩足を踏み入れた瞬間から広がる安定の日穏クオリティ。何もかもが非常に丁寧に創られていて、見事な1時間50分でした。
とはいえ、何事においても好みや価値観は人それぞれで、それは演劇の世界においても同じだと思います。Aさんは好きだけど、Bさんにとってはそうでもない。また、Bさんには響いたけど、Aさんにはあまり響かなかったなど。それは極自然なことであり、むしろそれで良いと思います。なので、自分自身の好みをあまり他人に強要するようなことは極力控えるべきかなとも思いますし、基本的には自分は自分、人は人の考え方でいることが大事だと思っているのですが、この日穏-bion-さんに関しては、日本人として、いや、人として、ぜひとも観るべきカンパニーではないかと感じてしまいます。それくらい心が清らかになるというか、心が豊かになるというか、とにかく大切な何かに気付かされることが多いカンパニーだと思うのです。今回も大満足の内容でした。
日穏-bion-さんはたまたま拝見した2014年公演の『Gift ~星空の向こうから~』で一気にハマり、そこからコンスタントに観劇させていただいています。個人的に好きな劇団・カンパニーをランキング形式に並べたら、間違いなくトップレベルに君臨しているのではないかと勝手に思っているのですが、それは、登場する人物それぞれに感情移入してしまいそうな絶妙な設定・背景・エピソードに加え、心が穏やかになるストーリー展開、さらに、思わずクスッと笑ってしまう優しい笑い、細部までよく作り込まれた舞台セット、物語の時代背景に合わせたBGM演出など、挙げたらキリがないくらいの好要素があり、非常に丁寧な作品創りをされているからだと思っています。
コロナ禍の影響もあり、日穏-bion-さんの作品を観るのは2020年の『初恋』以来3年ぶりでしたが、終始感じた懐かしい雰囲気、安定の見応え、そして感動。これぞ日穏-bion-さんの作品だと強く思いましたし、改めてこのカンパニー好きだなと認識させられました。様々な展開が繰り広げられながらも、誰も傷付けないほっこりとする結末に持っていくのはさすがです。
演者さん一人一人も個性的で、とにかく演技が素晴らしい。芝居であることを忘れてしまいそうな、とても自然体な会話劇が印象的でした。中でも内浦純一さん、岩瀬顕子さん、剣持直明さん、伊原農さん、鈴木朝代さんらが印象に残りました。特に栃木弁全開の剣持さんの存在感は圧巻。台詞を言わなくても舞台上にいるだけで見せ場を作れる素敵な存在だと思います。大好きな役者さんの一人です。種村愛さんも難しい年頃の心情を上手く演じられていたと思いました。