実演鑑賞
満足度★★★
開演時刻になると、現時点で空席のままである指定席の無効が宣言される。劇場スタッフが最前列より順に、空席に座りたい者を募り誘導していく。ちょっとしたカルチャーショック。今後こうなっていくのか。
開演前はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」第二楽章「家路」が延々と掛かる。小学校の下校の時間を知らせる、例のアレだ。軽い鬱な気分。舞台美術は粉の撒かれたステージが四分割、中心には謎の立方体の塔、モノリスのような謎めいたクリスタル。(中西夏之氏の作品「カルテット 着陸と着水X」)。バックに二つの巨大な金属の円の枠。左右端からゆっくりと中央に動いていき、交差しては互いを入れ替わるように元の位置へ。
テーマは陰陽だろうか。対称的な二つの事物が世界を構築している様。
音楽が凄く良かった。冨田勲っぽいシンセサイザーによるミニマル・ミュージック。加古隆氏と吉川洋一郎氏。伊藤詳による『ブッダ』のイメージアルバムを思い出した。
現れる四人の修行僧、左耳にだけ大きな耳飾り。次に現れるニ人には右耳にだけ耳飾り。白い繭のような耳飾りを下げた者も登場。ソロで踊る蝉丸氏の場面の曲が良い。舞台下から(?)青いライトが灯ると、発光した四面のステージは水面に見えてくる。舞踏による禅、瞑想。
これだけ実験的な空間に関わらず、居眠り客は見当たらなかった。見巧者の集結。
カーテン・コールは『アメイジング・グレイス』。熱狂的な外人客が喝采を叫び、劇団四季並みに繰り返された。これは外人の方がダイレクトに興奮する分野。