ノア版 桜の園 公演情報 ノアノオモチャバコ「ノア版 桜の園」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    美しい演出
    全体的にスタッフが創作した器は情緒溢れるもので、器の中で演じられた芝居はゼンマイ仕掛けの人形を見ているような感覚。斬新でもあった。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    誰でもご存知だろうけれど、物語のあらすじをまずかきこ・・・南ロシアの地主であるラネーフスカヤ夫人は夫と死別後、愛人とパリで暮らしていたが、愛人に裏切られ、経済的にもいきづまって、娘のアーニャとともにパリから領地の桜の園の屋敷に帰ってくる。だが、その領地も抵当に入っており、破産は目前である。しかし、没落貴族である夫人や、兄のガーエフは、自らの窮状を受容しているようでいても、浮世離れした彼らには現実が見えてこない。他人の金で生かされていることに気がつかないのだ。

    農奴の息子で今は成金となっているロパーヒンの建設的な提案にも耳を貸さず、結局屋敷は競売に付され、競売に競り勝ったのが、ロパーヒンであることが判明する。ロバーヒンはここに別荘を作って売り出す、という。領地の桜の木が切り倒される音が聞こえる中、彼らが屋敷を出て行く。

    美しい「桜の園」を舞台に、旧地主・貴族階級の没落とそれに取ってかわる新興ブルジョワジーの台頭を描く。


    この物語をノア版はあえて日本に置き換えて上演する。だから登場人物も日本名だ。しかし、「桜の園」に限っては日本に置き換える必要もなかったような気がするのだ。粗筋は殆ど変えてないものの、土岐という老女中のキャラクターそのものが失敗だったような気がする。土岐を笑のネタにしたかったのだろうが、殆ど笑えない。折角の「桜の園」の情景が台無しになってしまう恐れさえあった。

    そうして毎回の奇怪なダンスシーンのバックにそびえ立つ桜の巨木のセット。実に美しいです。誰もあんなふうに桜を表現すること自体、気がつかないと思う。芸術でした。その桜を押し出すような導入音楽と照明。素晴らしいです。確か前回の照明さんも今西理恵ではなかったか?終盤の桜の巨木をバックに桜の華吹雪が舞う演出はもう、お見事!と拍手してしまいたいような春欄漫で、その演出に惚れぼれし、とにかくスタッフが秀逸でした。

    ただ、今回の舞台は初心者にはむかないような気がする。「桜の園」を読んだ事がない方は何がなんだか理解できないかも知れないからだ。

    この作品の特徴は大きな事件というほどのイベントは競売くらいしか起こらないし、恋愛が破綻したり成就する訳でもなく、大団円を迎えることなく幕が下りる。にもかかわらず、見終わった後で、人間に対する認識が深まったように感じられるのがチェーホフ劇の魅力なのかも知れない。




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    2010/06/11 15:46

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