マクベス-シアワセのレシピ- 公演情報 THEATRE MOMENTS「マクベス-シアワセのレシピ-」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    予言に翻弄されるマクベスを現代に読み替える
     シンプルな装置の中で、主に身体表現で戯曲を立体化するスタイルでした。想像していたよりも原作に忠実で、初めて「マクベス」を観た人にもその内容があらかたわかるようになっていたことに好感を持ちました。主人公マクベスは三人の魔女の予言に翻弄されますが、それを現代に読み替えた演出がとても面白かったです。

     オープニングの「観客の恋愛体験をその場で手短に演じてみる」という余興(ガチンコ馴れ初め芝居)は、個人的には好きにはなれませんでしたが、舞台から役者さんが観客に気さくに話しかけ、希望者全員に飴を配るサービスづくしの幕開けには、劇団の姿勢がよく表れていて感心しました。ロビーでは絵画展が併催されており、演劇鑑賞の窓口を広げる工夫もされています。
     初日はシアター・カイが通路席まで埋まっており、劇団の固定ファンを大勢獲得されているのがよくわかりました。

     受付に長蛇の列ができており、スムーズに客席につけたとは言いがたい状況でした。終演後に演出の佐川大輔さんとお話させていただいた際、作品の感想と一緒にそのことをお伝えしたところ、真摯に聞き届けてくださいました。翌日からは具体的に改善されていたようで、観客への誠実な対応を嬉しく思いました。

    ネタバレBOX

     衣装は末広がりのパンツ・スーツで統一しつつ、中に着る白系のインナーやヘアメイクで個人差を出していました。統一イメージで俳優を記号化し、演じる役が次々に変わっていくことで、物語の普遍性を伝えられていたと思います。
     マクベスとマクベス夫人を演じる役者さんをある場面から変えることで、2人のおかれた状況および精神状態が大きく変化したことを示すのは、演出家の解釈がはっきりと表れて面白いです。

     フィジカルシアターとはいえ心理描写は非常にリアル。メソード演技の技術を感じさせました。たとえば、王位には就けたが心の静寂を失ってしまったマクベス(山本悠生)が、マクベス夫人(絵理)に「お前のせいでこんな目に遭った!」と涙を浮かべて逆ギレする姿に、爆笑できたんですよね。「演技をしている人たち」を眺める階層から、「自分のことを棚にあげて誰かに当り散らす困った人」を目の当たりにする階層へとジャンプできたからだと思います。

     赤い糸と紙(新聞紙)、てるてる坊主などの小道具の使い方も効果的でした。
     敵兵に囲まれ孤立したマクベス(佐川大輔)は、新聞記事を身にまといながら舞台をぐるぐる走り回ります。それはTVコマーシャル、ノウハウ本、占い、噂話などに翻弄される現代人を表していました。

     個人的にもったいないと思ったところを数点。ダンカン王を演じていた山本悠生さんが、後でマクベスを演じていたのには違和感がありました。1人1役ではないものの、メインの役柄については固定イメージがつく演出だったので、違う役者さんにしてほしかったです。
     マクベスを破ったマルカム王子が勝利宣言をする場面は、できれば皮肉な視点も盛り込んで欲しかったですね。最初の場面のリプライズになり、パタっと突然とぎれるような幕切れも物足りなかったです。

     マクダフのエピソードをカットして「母の腹をやぶって生まれてきた」のをマルカム王子にするのは、思い切った選択ですが巧い工夫だと思えました。

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    2010/06/08 10:40

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  • しのぶ様

    「観てきた」への書き込み、ありがとうございます。

    MOMENTS主宰、佐川大輔です。

    私達は「観終わった観客のリアクションがあって、初めて作品は成立する」と考えています。

    加えて、私達はまだまだ評論されることが少ない無名劇団。

    このように、「演出」、「演技」、「衣装」、「制作面」まで触れた詳細な感想、本当に嬉しい宝物です。


    終演後、しのぶさんから話しかけてきてくださって、ありがとうございました。

    僕は批評家さんと直接お話しをする機会にあまり恵まれていませんし、なおかつうちの芝居はちょっと普通の芝居と違うせいか、人によっては評価を迷う方も多く、率直な意見を伺うことが出来ない場合も有ります。

    今回、しのぶさんの「書き込み」を拝見し、自分達の「意図」が上手く伝わっている部分、まだ未消化な部分があることがよくわかりました。


    ある程度成功している点としては、

    入場時の語りかけや余興で「観客と舞台」との距離を縮めることや

    衣装を統一し、キャストチェンジすることで、「物語の普遍性」や「キャラクターの心情変化」を現すこと

    新聞や、赤い糸などの小道具による象徴的表現などは

    これまで私達が公演回数を重ね、培ってきた方法論が観客に伝わるものになってきていることを、改めて認識できました。


    同時に、しのぶさんの「もったいない」点のように

    複数で一役を演じることによる問題点や、

    「観客に想像力を持って観てもらいたい」という狙いから派生する「主張の弱さ」などが課題かもしれません。



    私達はまだまだ駆け出し。

    多くの観客の意見を取捨選択し、成長していきたいと考えます。

    機会があれば、より率直な意見、お聞かせいただければとても嬉しいです。

    どうぞよろしくお願いいたします。



    今後も私達は、「演劇」の持つ可能性を追求し、「舞台と観客」の距離を縮める創作活動を通じ、「演劇(特に小劇場)を広く一般化していきたい」と考えています。

    宜しければ、これからも応援、お願いいたします。

    また、どこかでお会いできたら、お話させてください。

    ご来場ありがとうございました。

    2010/06/11 15:55

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