チノハテ 公演情報 Nana Produce「チノハテ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    江戸時代には巷の事件を元に歌舞伎劇の舞台化が行われたときくが、これはまさに昨今話題のフィリッピン根城の悪党団摘発を芝居にしたキワモノ。なかなかよくできている。
    田村孝裕は劇団ONEOR8(いちかばちか)を主宰してもう三十年近い。もう、岸田戯曲賞はとっくに取っていてもおかしくない実績なのだが、小ぶりな素材で変にうまいところがネックになっているのかも知れない。今回は同じような出の寺十吾が俳優として出ている。初めて見るプロデュース集団の製作である。
    日本ではみ出した浮浪者(寺十吾)にいい加減な暮らしの女(鶴田真由)を父母に、行き場のない若者三人(松島庄汰 池岡亮介 竹内夢)が兄弟の疑似家族となって、フィリッピンらしき某国山中の抑留所のような小屋(このなんだか解らぬセットはうまい)で、時々見回りに来る現地人(依田啓司、後で実は日本人と解る)の目を盗んで、犯罪団の手先(渋谷康幸)の言うままに違法薬品の運び屋の中継点のような仕事をして辛うじて食っている。危険な仕事で地元住民との軋轢もあるが、一応は家族らしく暮らしている。前半のこの構造が解るまでの、なにやら不思議なチノハテの小屋の生活が、なかば現在の張りのない日々の日常生活と重なるところもあって面白い。後半は、身元が発覚しそうになり逃亡しようとなって、それぞれの身元が明らかになり対立しながらも外部とも戦わなければならなくなり、そこでお互いの本音が明らかになり、結局全員が自滅していく。
    スジを書けばこういうことなのだが、この作者らしくその間のどうしようもない人間たちの荒唐無稽に見えるくらしぶりがリアリティを持ってくるところが見所か。
    パンフレットを買えば製作意図や作者の意図ももっと明白になるかも知れないが、パンフレットを買えば一万円を超す。それはちょっと高い見物料だ。休憩なしの1時間50分。
    入りは平日の昼8割近かった。

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    2023/07/12 15:19

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