ジーザス・クライスト=スーパースター 公演情報 劇団四季「ジーザス・クライスト=スーパースター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    [ジャポネスク・バージョン]

    1970年、コンセプト・アルバム『ジーザス・クライスト・スーパースター 』が発売される。若きアンドリュー・ロイド・ウェバーが作曲、ティム・ライスが作詞したロック・オペラ。ジーザス役を歌うのはイアン・ギラン(当時ディープ・パープル)。1971年にブロードウェイで舞台化。1973年に映画化。ノーマン・ジュイソン監督は舞台版は観ずに、アルバムから触発されたイメージだけでイスラエル・ロケを敢行して撮影。アンドリュー・ロイド・ウェバーの意図とは違った作品になり、彼は酷く嫌った。実は自分は映画しか観ていないので、舞台版の方に逆に違和感。
    劇団四季の日本版は1973年初演。白塗りに歌舞伎の隈取り、白い大八車、楽曲の和楽器アレンジ、竹の矢来垣。のちにジャポネスク・バージョンと名付けられた。
    1976年、よりオリジナルに近いエルサレム・バージョンも上演。

    イスカリオテのユダ役、佐久間仁氏は堀内孝雄と谷村新司を思わせる声色。全体的に今作の曲調はどこかアリスを思わせる。
    ジーザス・クライスト役、神永東吾氏は突然「キャー」と奇声を上げる様がどおくまんのキャラっぽい。
    ヘロデ王役、大森瑞樹氏の格好はアメコミ・キャラのカブキマンか、採用されなかったデヴィッド・ボウイのコスチュームか。ジャンプのギャグ漫画に出て来そうなルックスが大インパクト。

    結局のところ、何故ユダはジーザスを裏切ったのか?がテーマ。同じテーマである太宰治の『駈込み訴え』も必読。そして『神の計画』というものも関係してくる。聖書を全て事実だと受け止めて読むと、謎だらけ。未だにずっと考え続けている。

    ネタバレBOX

    〈背景〉
    当時エルサレムはローマ帝国の属国として「ユダヤ人の王」を任命されたヘロデ大王が治めていた。
    それとは別に属州総督としてポンテオ・ピラトが赴任。二人は互いの立場、権力を巡って緊張関係にあった。
    ユダヤ教は三派に分かれて対立していた。パリサイ派(現ユダヤ教の基となる)、サドカイ派(富裕な貴族祭司階級、今は消滅)、エッセネ派(俗世間から離れて共同生活を送った厳格な集団)。エッセネ派のクムラン教団にジーザス・クライストは属していたとする学説が現在は有力。アンナス、カヤパはサドカイ派。

    ①カヤパの義父・元大祭司アンナス(日浦眞矩〈まく〉氏)による予備審問。
    ②大祭司カヤパ(高井治氏)による裁判。
    ③ローマの総督ピラト(山田充人〈あつと〉氏)の尋問。無罪。
    ④ヘロデ王(大森瑞樹氏)の尋問。無罪。
    ⑤ピラトのもとに送り返される。無罪。
    ⑥暴動寸前の群衆がジーザスの死刑を要求した為、ピラトの手に負えなくなり引き渡す。

    〈神〉
    天地創造し人間を作り出した造物主。古代ヘブライ文字4文字でYHWH(或いはYHVH)と記されており、ヤハウェ、エホバと呼ばれる。

    ①預言者モーセ(紀元前16世紀または紀元前13世紀と意見が分かれる)。
    ヤハウェの声に導かれ、エジプトの奴隷階級だったヘブライ人(イスラエル人)を率いて約束の地カナン(地中海とヨルダン川、死海に挟まれた地域一帯=現イスラエル)へと旅立つ。
    モーセはシナイ山(エジプト)でヤハウェと契約をする。それが『十戒』。それを基にしたものがユダヤ教。

    ②預言者ジーザス・クライスト
    そもそも西暦のBC(紀元前)の意味は〈Before Christ=クライスト以前〉、AD(紀元後)の意味は〈Anno Domini(ラテン語)=私達の主の年に〉。人類の歴史上、最大のスーパースターであることは間違いない。彼が磔刑に処せられ死んだ後に、弟子達はずっと彼の素晴らしさを説いて回った。迫害と虐殺が300年近く続いたが、313年ローマ皇帝コンスタンティヌス1世が神による夢のお告げ(諸説ある)で戦いに勝利。ミラノ勅令を発布してキリスト教を公認し、自らもキリスト教に改宗。392年ローマ皇帝テオドシウス1世が国教に定めた。ジーザスと結んだ新しい契約から、新約聖書と呼ばれる。タルソスのパウロが父なる神(ヤハウェ)、神の子(ジーザス)、聖霊(マリアを処女懐胎させた力)は三位一体だと唱え、アウレリウス・アウグスティヌスが理論的に完成させた。

    ③預言者ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ
    610年頃、アラビア(現サウジアラビア)のマッカ(メッカ)の郊外にあるヒラー山の洞窟に大天使聖ガブリエル(ジブリール)が現れ、ムハンマドにクルアーン(コーラン)を啓示。当時のアラビアは部族社会で国家は形成されていなかった。マッカで布教活動を開始するも迫害を受ける。
    622年7月15日、迫害から逃れる為、ムハンマドは70人余りの信徒と共にヤスリブ(後にメディナと呼ばれる、マッカの北方約350kmの農村)へと移住〈『ヒジュラ』(聖遷)〉。イスラム暦(ヒジュラ暦)元年とする。
    630年マッカに攻め入り征服。アラビアの諸部族を帰順させ、アラビア半島を統一する。
    ガブリエル(ジブリール)を派遣した神アッラーはヤハウェと同じ存在。

    〈『神の計画』〉

    聖書にはジーザスの逡巡が詳細に描写されている。驢馬に乗ってエルサレムにやって来たジーザスは最後の七日間をここで過ごす。父の計画に気付きゾッとする。「我が父よ、もし出来ることでしたらどうか、この杯を私から過ぎ去らせて下さい。しかし私の思いのままにではなく、御心のままになさって下さい。」全人類の背負った原罪を贖罪する為に、最も残酷で最も惨めな、苦痛に充ちた拷問死を受けなければならない己の宿命に気が付いてしまう。永遠に人類の代表として苦しみ続けなければいけない。「父よ、彼等をお赦しください。自分が何をしているのか分からないのです。」
    刑場で天を見上げ「エリ、エリ、レマ、サバクタニ(我が神、我が神、どうして私をお見捨てになったのですか?)」と旧約聖書の詩篇22篇に記されているダビデの賛歌を唱える。
    「成し遂げられた」

    ユダも自身の存在意義が、『神の計画』によって書かれた安っぽい学芸会の役でしかないことを知って首を縊る。

    〈個人的意見〉

    麻原彰晃をモチーフに『ジーザス・クライスト・スーパースター』と筒井康隆の『ジーザス・クライスト・トリックスター』を叩き台にして作品化して欲しい。いつの日が観れると思っている。

    現代のパレスチナ自治区にジーザス・クライストが誕生してしまった、なんてのはどうだろう?

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    2023/07/05 06:08

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