ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演) 公演情報 劇団チョコレートケーキ「ブラウン管より愛をこめて-宇宙人と異邦人-(7/29、30 愛知公演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2023/07/02 (日) 14:00

    特撮ヒーロー物の金字塔「ウルトラマン」へのオマージュに満ちた、
    これは大人たちの”目覚め”と”再生”の物語だ。
    子供向け番組で「差別」をテーマにするために上司と闘い、
    表現者として自己の原点を見つめ直す。
    劇中劇の挿入でストーリーが立体的になる構成が巧み。

    ネタバレBOX

    特撮番組制作会社「東特プロ」は、「経費削減」を最優先するようにと
    うるさく言われながらヒーロー物の番組「ワンダーマン」を制作している。
    今度新しく来た脚本家は、監督の後輩で特撮は初めてという若干気弱な印象の青年。
    第15話は経費削減のため、ワンダーマンが怪獣と闘う場面を入れずに作れと言われる。
    そんな無茶ぶりに頭を抱えながら、若い脚本家やオタクスタッフたちは
    愛する巨大特撮ヒーローの草分け「ユーバーマン」にも、
    やはり怪獣と闘わない回があったことを思い出す。
    彼らは、子どもだから理解できない、という先入観にとらわれず
    「差別してはいけないんだ」という大切なメッセージを伝えるため、
    今までにない「ワンダーマン」を創り上げようと苦難の道を走り出した・・・。

    直接差別されたりいじめられたりした経験の無い脚本家が
    「差別はいけない」というメッセージを届けたい、と上司に力説する姿は
    確かにそれだけでは説得力が空回りしがち。
    だがそこで力を発揮するのが「劇中劇」としての彼の書く脚本だ。

    その脚本の中で、地球にたどり着いた孤独な宇宙人はひどいいじめを受ける。
    たった一人心を通わせ助けてくれた地球の女性は、巻き添えになって死んでしまう。
    理由の無い理不尽な差別と、それに対する怒りと悲しみを
    ストレートに描いて子どもにも伝えようとする。

    上から「大人になれ、テレビ局の言う通り本を書き直せ!」と言われる
    脚本家をサポートする人々にも、差別の体験が透けて見える構造が巧い。
    誰もが自分の差別体験を率直に語れるわけではない。
    だが、ある出演者のことを「あの人も差別された経験があるんじゃないか」
    という監督のつぶやきが、同じ辛さを知る者同士のシンパシーを感じさせる。
    そう、口に出さないだけで、多くの人が差別された経験を持っている。
    そして差別する側の人間は、多くの場合無自覚だ。
    だからこそ子どもに「それ差別なんだよ、間違ってるよ」と伝えるべきなのだ。
    表現者の自覚と原点、そこに立ち帰って行動したラストはほろ苦いが爽快だ。

    私は青臭い理想が結構好きな方だ。
    歳とっていい大人になれば、理想と現実が乖離することぐらいわかってる。
    だけど理想を忘れ否定する行動は、どこか胡散臭くて信用できない気がする。
    だから要領悪く、うまく立ち回れず、結果お金も貯まらない。
    あーだけどこれも爽快でいいなと、劇場を後にしてちょっと気分が良かった。
    ありがとう、劇チョコ!

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    2023/07/03 02:12

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