実演鑑賞
満足度★★★★
アンジーの『天井裏から愛を込めて』を彷彿とさせるタイトル。アンジーはメルダックでデビューしたのだが、先に同事務所でデビューし大ブレイクしていたブルーハーツを踏襲させられた。本来は「頑張れロック」路線ではなかっただけに非常に不運。実際は『たま』系の独自世界のアーティストだった筈。
小学生の頃、再放送の『帰ってきたウルトラマン』で観た『怪獣使いと少年』。滅茶苦茶衝撃を受けた。灰色の工業地帯で繰り広げられる全く救いのない物語。プロレタリア文学のような目線。『帰ってきたウルトラマン』はスモッグのどんよりとしたイメージで、ディストピアの日本の姿を突き付ける(ただそれ以後観ていないので記憶による美化はあると思う)。後年、切通理作氏のデビュー作『怪獣使いと少年』を読んだ時、凄く腑に落ちた。
巨大変身ヒーローモノが1990年に作られている世界線。(実際は『ウルトラマン80』放送終了の1981年から1996年の『ウルトラマンティガ』までは空白)。
テーマは『差別』。誰にも正解の見えない永遠の難問。TV番組『ワンダーマン』にて、伝説の『怪獣使いと少年』に挑もうという若き脚本家の心意気。子供向けTVドラマで一体何処まで本質を描けるのだろうか?
主人公の脚本家は伊藤白馬氏。特撮モノに初挑戦。
大学時代の先輩で『ワンダーマン』のメイン監督は岡本篤氏。木下惠介っぽい清潔感。
特撮監督は青木柳葉魚氏。
助監督は清水緑さん。
主演のワンダーマン役は浅井伸治氏。ペナルティのワッキーを思わせる役作り。
大物ゲスト枠は橋本マナミさん。気負い過ぎて少し固かった。
宇宙人(コクト星人?)役の足立英(すぐる)氏の振り幅が素晴らしい。
MVPは東特プロのプロデューサーの林竜三氏とTV局から出向しているプロデューサーの緒方晋(すすむ)氏。ここのリアリティがドラマの厚み。社会で生活している人間の重みがあってこそ、ただの絵空事のファンタジーにはしない。
是非、観に行って頂きたい。