ヴィクトリア 公演情報 シス・カンパニー「ヴィクトリア」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    今更褒めるも何もないのだが、大竹しのぶさんは凄い女優だ。もう一度観たい演目。北島マヤ(『ガラスの仮面』)だよなあ。『ガラスの仮面』の最終回は大竹しのぶさんの独り芝居でどうだろう?何か皆を納得させるものになりそう。ヴィヴィアン・リーのような、精神を患った美しい女の独白は古今東西の女優魂を刺激し興奮させる永遠の題材なのだろう。

    イングマール・ベルイマンの幻の映画企画『ある魂の物語』。脚本は1972年に書かれた。女優のクローズ・アップのみ全編ワンカットを狙った実験的な意欲作。どの映画会社にも受け入れられず、主演予定だった女優の降板で企画は流れた。1990年スウェーデンでラジオドラマとして日の目を見る。
    フランスで2011年、ソフィー・マルソーの一人芝居として舞台化。その舞台をそのまま2015年TVドラマ化(『A Spiritual Matter』)。
    成瀬巳喜男も高峰秀子に背景なしで撮影する映画の構想を語っていた。役者以外何も存在せず、逃げ道のない世界。

    ステージングは小野寺修二氏。空間設計なのか、シーンとシーンの繋ぎのアイディアなのか。照明の日下靖順(やすゆき)氏と共に幻想的な世界を味あわせてくれる。揺れるカーテン、漏れる光、何処からか聴こえる音、一人芝居を名アシスト。ヴィクトリアの脳の中、心の中、記憶の中を『ミクロの決死圏』のように彷徨い歩く観客達。巨大な薄手の白いカーテン、柔らかなたゆたいに目眩を覚える。

    ベルイマンの女性論のようにも感じた。普遍的な脚本。必見。

    ネタバレBOX

    43歳のヴィクトリアは大学教授の夫に問い詰める。「何故、私とSEXしないのか?」「手でだってしてくれない。」「何故あの女のもとに通うのか?」

    パーティー会場での尊敬するリヒャルト・シュトラウス。

    いじめられっ子だった少女は突然周囲にちやほやされるようになり、世界に違和感を覚える。画家に憧れて芸術に全てを捧げ。

    チャリティー・イベントでのレセプション。グランド・ピアノ。

    追い詰められた夫は拳銃自殺を遂げる。

    葬式では死体の腐敗臭に吐き気をもよおす。

    侍女と列車で旅行。隣の個室の紳士二人組に興味。

    公園で声を掛けられた見知らぬ男とモーテルへ。実は私は下層階級の男の観察に来た女優、いや金さえ出せば何でもしてあげるすれっからしの売女。

    やっと見付けたこの世の真理。『現実なんてものは存在しない』。

    精神病院の閉鎖病棟に監禁された老女。久方振りに鏡を見せられて声を上げる。そこには人間ではない別のナニカが映っていた。

    食中毒が蔓延して吐瀉物にまみれた院内。運良く無事だった私は別の部屋に案内される。そこに現れた8歳位の少女。血の色をした涙のような赤いメノウ。

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    2023/06/28 17:17

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