雨の世界 公演情報 SPIRAL MOON「雨の世界」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    面白い。
    秋葉舞滝子 女史は演出の魔術師か、そんなことを改めて感じさせる素晴らしさ。
    舞台雰囲気の統一感、そこに漂う優しさ、温もりがじわっと広がる。丁寧な演出は いつも通りだが、「雨の世界」という独特の世界観を抒情豊かに紡ぐ。

    昨年、ウテン結構第6回公演「雨の世界」(サブテレニアン)を観ているが、やはり劇場・演出・役者等が違うと全く印象の異なる作品が出来る、ということを再認識。比べるのも どうかと思うが、終演後 秋葉さんと話した際、熟女が演じた と。ウテン結構は瑞々しさ、一方 SPIRAL MOONは、大人女性のしっとり感、その違いこそが作風であろう。
    コロナ禍で厳しい状況が続く演劇界、それでも<生>の演劇の醍醐味を存分に味あわせ 楽しませる、そんな<気概>を感じさせる公演。
    (上演時間1時間20分 途中休憩なし)【月組】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、暗幕で囲い 上演前は中央に木製の椅子1つが置かれているだけ。床は切紙が敷き詰められている。場面に応じてテーブルや椅子を搬入 搬出もしくは配置換えをすることで情景・状況を変化させる。始めに運び入れられた木製の玄関ドア、それ以降に運び込まれるテーブルや椅子も形状こそ違うが 全て木製である。床の切紙が照明によって色づいた枯れ葉のイメージ、また木立の中を思わせる情景 といった全編<木>の温もりを感じさせる。同時に山奥か と思わせる。下手には 紫陽花の鉢植。

    物語は サスペンス風に始まるが、いつの間にか女同士の少し痛い友情物語に変転する。俗信の雨女、その悲哀と雨天(嵐)ゆえに知り合った女性の話を交差させ、「雨」をテーマにした物語を抒情的に紡ぐ。更に雨女になった謂われ といった家系的な繋がりを描くことで、更に深刻な悲哀を表出する。
    嵐の夜、1人の女・しおり(斎木亨子サン)が助けを求めて館のドアを叩く。館の主は幸子(秋葉舞滝子サン)といい、快くしおりを館の中へ入れる。冒頭、強風と雷鳴の音響、黒のフード付きマントを羽織った幸子の老婆風の佇まいや喋り方で怪しげな雰囲気が漂う。世間話をしているうちに、幸子が若いということが分かる。そして自分は「雨女」と言い出す。

    場面は 幸子の学生時代、親しかった友人4人(男2人、女2人)との思い出話だが、必ずしも楽しい思い出だけではない。運動会・野外行事などのイベントが雨で中止になったのは、4人の中の誰かが「雨女」もしくは「雨男」だからだという。さらに友人カミーユ(環ゆらサン)との恋愛を巡って仲違いをする。
    一方 しおりは、何でこんな嵐の夜に慣れない運転をしていたのか。幸子がしおりの様子から、状況を推理し始める。父親からの虐待、逃避行動するために嵐の日を選んだ。しおりが学んでいる心理学、その学問(心理)的な場面を「過去<幸子>と現在<しおり>」の物語として挿入する。幸子の回想としおり の現状が直接繋がる訳ではなく、それぞれの話を交差させ「雨」に纏わる物語を紡ぐ。

    興味深かったのは、「雨女」は家系でもあるような説明。農村地域、そこで雨乞いを司る家があったという。現象「雨」は、人によって、または時と場合によって捉え方(大切さ)が異なる。が、幸子の姉 福子(最上桂子サン)は小学校の教諭をしているが、学校行事のたびに雨が降り、自分の存在そのものが邪魔者扱いされる。自分ではどうすることも出来ない理不尽な宿命、家系・血の呪いのようなものを感じて、ついには…。

    演出で面白いのが、降水現象をパネルを使用した科学的な説明をする 一方、フロイトの心理学を、しおりと幸子の会話で説明していく。具体性と抽象性を交錯させたような描き方。
    音響は、暴風雨・雷鳴のサウンド・エフェクト、場面転換時はピアノの優しい音色。照明は全編薄暗い色調、そして話す女性の心象を浮き立たせるための、淡いスポットライトが実に効果的だ。
    役者は女優4人、男優2人の静かだが力のこもった演技で、不思議な世界へ上手く誘ってくれる。ラストは暗幕を開け 心象風景に光が差すような…。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/06/17 07:20

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