松竹亭一門会Ⅱ 春の祭典スペシャル 公演情報 afterimage「松竹亭一門会Ⅱ 春の祭典スペシャル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    ダンス×落語。一見交わることのなさそうなこの二つの芸を融合させた本公演には、観る前からすごくワクワクさせられました。長く活動しているダンスカンパニーが新たなジャンルや体感を掘り起こそうとする、そのチャレンジングな姿勢にも感銘を受けました。ダンサーが高座に上がるという異例の公演ですが、どの方からも落語への愛や敬意をひしひしと伝わり、同時にそれぞれが個人の強みや個性を最大に活かした演出でここでしかできない「オリジナル」を届けようとする気概にも胸を打たれました。

    ネタバレBOX

    個人的に引き込まれたのは、松竹亭撃鉄こと堀江善弘さんの「映画」を題材にした落語「まんじゅうこわいfrom Hollywood」。「まんじゅうこわい」という超定番的噺をPOPかつユニークにコーティングした切り口は、落語を知らない若い世代や観客にもその可能性や面白さを手渡せるような展開で、身体を駆使したエンドロールの演出に至るまでとことんエンタメ性に富んでいて、一発目の演目としてしっかりと心を掴まれました。
    ゲストである登龍亭福三さんによる高座は、さすがプロの芸といった見応えがあり、名古屋という街の成り立ちを抑揚あるリズム感で伝える力量にその土地で今しか観られないステージを観ているという贅沢感がありました。落語へのチャレンジに関しては、楽しみ、楽しませるということに全力で舵を切っている点が清々しく、その人間力が時にクオリティ云々を凌駕していくような面もあり、「祭典」と銘打つに相応しいステージの数々であったと思います。

    落語へのアグレッシブな挑戦心の一方で、やはり老舗のダンスカンパニーによるダンスとの融合やダンスカンパニーとしての強みをもっと見たかったという体感も残りました。「オープニング」や「ダンスで分かる三方一両損」などの演目でその片鱗は感じられたのですが、期待値から鑑みると少し物足りなさを感じてしまう点が否めず、もっとこの人たちの真骨頂を見たいという思いに駆られてしまいました。ただ、身体芸である「ダンス」と話芸である「落語」の融合の配分やプランニングには相当な難しさがあること、同時に場数を踏む毎に新たに拓ける可能性も伺えたので、今後もこの「祭典」シリーズが都度アップデートされながら続けられていくことに期待を寄せています。近年ないほどに、手放しで楽しめる瞬間が多かったので、「面白さそうな舞台があるよ」と友人や知人を誘っていくにはぴったりの公演だと思いました。

    エンディングで椎名林檎×トータス松本の「目抜き通り」で皆さんが踊られている時、その歌詞がみなさんの表情とあまりにぴったりで気を許すと落涙もやむをえないほどに感激してしまいました。あれは、みなさんの身体から漲るエネルギーそのものが私の身体に心に伝播して起こった反応だと思います。考えるのではなく、感じること。ダンスがまさにそうであるように、言葉よりも先に身体が動き出すときの生命の力と輝き、理屈ではないものをしっかりとこの手に握らされたような気がしています。

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    2023/06/05 14:23

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