実演鑑賞
満足度★★★★
面白い、お薦め。
物語は、海の特攻隊「第128震洋隊の悲劇」を 昭和20(1945)年初夏から同年8月16日迄を中心に描いている。”人の噂も75日”というが、今年で戦後78年になるが けっして戦争という<不条理>を忘れてはならないことを訴える。今まで観た桟敷童子公演に比べると舞台装置はシンプル。しかし それゆえ人物が焦点になり、心情が鮮明に浮かび上がってくる。
舞台は高知県の秘密軍事基地と周辺漁村。特攻隊員が出撃するまで民家に投宿したことで芽生えた心情、民間人との交流を通して自分の家族への思いを馳せる。電波状況が悪く玉音放送が聞き取れず、情報が混乱したことで悲劇が…。演劇という虚構と実際の出来事、その虚実を実に巧く紡いでいく。軍人・民間人それぞれの立場や情況等の違いによって抱く思いは異なる。その心情を情感豊かに演じる役者陣の演技が凄い!
「海の木馬」は、震洋一型と名付けられた機体が海上を進めない<木馬>のようだ と。名は、太平洋を震わす を意味するが、実態はお粗末な機体に人を乗せて特攻させる。そこには期待もなく、<死>だけが横たわる という皮肉が込められている。天井から一筋の滝のように流れ積もる砂、その高さの分だけ悲しみが…。
(上演時間1時間50分 途中休憩なし)