夢見る無職透明 公演情報 演劇プロデュース『螺旋階段』「夢見る無職透明」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    タイトルにある「無職」であれば、先行き不透明で不安であろう。しかし、物語はそんな40歳男が夢を持ち、逞しく生きようとする人生応援歌を謳い上げる。歌といえば、舞台がスナックということもあり、上演前から昭和歌謡 デュエット曲が流れており、懐かしさを誘う。

    あらすじ にある理不尽な理由で解雇…残業代不払い、有給休暇が使用できないブラック企業、それでも真面目に働いていた男が味わう悲哀。同じような夢を繰り返し見る、そのデジャブのような展開が少しづつ変化する。突付けられたコトを受け入れるだけではなく、その状況に対処 抗う姿を通して男の成長をみる。

    再就職の面接シーンが秀逸。当初、男はマニュアル的な志望動機・理由を語っていたが、だんだんと日常の些細なことの中にも夢を抱くことが出来ると。固定観念や常識に縛られた思考や行動から脱し、自分の思いを熱く語る。スナックでの面白可笑しい夢物語と現実生活をリンクさせ、<螺旋階段>から見るように 同じような光景に見えて 実は違う が描かれている。まさに 夢と現実が交錯する人間ドラマ、観応え十分。
    (上演時間1時間35分)

    ネタバレBOX

    舞台美術はスナック内…上手にはカウンター・ハイスツール・観賞植物、後ろの壁はボトル棚、下手はコーナーソファとカラオケセット、天井にはミラーボールが吊るされ雰囲気は十分。これが夢の中だとすれば、現実は 舞台と客席の間の上手スペースにキャスタ付のベットを搬入搬出させ、万年床という侘しいイメージを作り出す。主人公 柏木祐樹(根本健サン)は、40歳独身、そして突然 無職になった。1人でベットを慌ただしく出し入れする姿が滑稽であり、同時に悲哀を誘うという巧い演出だ。

    ブラック企業がホワイト企業へ転換するため、先輩から任意退職を勧められる。あまり深くも考えず受け入れてしまうが、実際退職したのは柏木1人だけ。取り敢えず失業保険で生活しようと…。ある日、サラリーマン時代に通っていたスナックの夢をみた。スナックママ 夏樹、従業員の まい、常連客の木下忍や佐山俊之など個性豊かな人々が夢に現れドタバタ騒動が起きる。いつの間にか 柏木は まい から責任を取ってと結婚を迫られる。現実の願望が夢の中では逆になって表れる。嬉しいような困ったような複雑な思いが擽ったい。

    同じようなドタバタの夢が繰り返されるが、ただ状況に流されるだけではなく、その場に応じた対処をする。繰り返し=少しずつ 成長していく様子を表す。人はそう簡単には変われない。そして就職面接シーンへ繋げる。40歳独身男が夢を持ってはいけないのか と熱弁する。
    精神的にも肉体的にもまだまだ頑張れる。ミラーボールの光のシャワーを浴び カラオケを熱唱、登場人物がそれを応援するように踊る、そこにスナックらしい光景をみる。

    舞台技術…音響音楽は、上演前に ♫「男と女のラブゲーム」「3年目の浮気」♫などスナックでのデュエット曲の定番を流し、雰囲気を醸し出す。(パント)マイムに合わせてドアのノックやチャイム音。照明は設定にあったミラーボール。出来れば、柏木のアパートが火事になった時、照明を少し朱色へ、併せて けたたましい消防(車)サイレンが聞こえるとよかったかな。
    演技は 皆さん熱演で、人によっては水をかぶるといった 体を張ったことまで。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2023/05/28 05:16

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