実演鑑賞
満足度★★★
昨年KAATが試みた市民参加演劇の続編。庭劇団ペニノのタニノクロウの構成演出。
主舞台は横浜中華街の外れのアパートの一画にあるコインランドリーが横に長く組まれ、その隣には中華食堂とかスナック、雑貨屋らしき店、そこに、さまざまな国の人々が現れる。ゼリーを運ぶ人が居たり、短軀の人(赤星満)が絵本のダンゴムシの童話を語ったり、女性が歌ったり、二階から登場人物全員の靴を吊る人が居たり、なかには段ボールで作ったロボットのかぶり物の人も居たり、置物で中央に丸い笑う人形がおかれていたり、その数・十五人。登場人物にはなにがしかの役が振られているが、全体で一つの物語が進行するわけでもない。つまり、昨年の「虹む街」の「果て」を演じているワケだが、それほど深刻な終末を迎えるわけでもない。80分だらだらと続く。
タニノクロウ作品には波長の合う作品とそうでない作品がある。庭劇団ペニノの公演でも、独特の細部に凝りに凝った作劇や装置がはまる作品と、結局意図がつかめない作品とがある。昨年の「笑顔の砦」(吉祥寺シアター)が傑作だったので、横浜まで足を伸ばしたが、そう次々と傑作が生まれるわけもなく、今回は少し投げやりな感じで、そういう時もこの作s者には時々ある。笑顔の砦はスタッフキャスト田舎の漁村に合宿して作ったという情熱が端々から感じられたが、今回は市民との共同作業という点でも感じ取れるところがなかった。