実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/05/09 (火)
赤坂RED/THEATERにてタクラボ『神様お願い』を観劇。
“ラボ”という名に相応しく、業界初採用となるNFTチケットでの入場や、本来であれば終演後に開催されるようなアフタートークを前座に組み込むなど、まさに実験的な取り組みが多く盛り込まれ、終始ワクワクが止まらない観劇となりました。また、主宰の宅間孝行さんのお芝居をキャパ200弱程度の小劇場で観ることが出来たのも久し振りのような気がします。開演前の客席とのコミュニケーション、カーテンコールでの今日の一言、宅間さんの挨拶などを含め、前身の東京セレソンDXの頃に新宿シアターサンモールなどに足を運んでいた当時の懐かしい感覚も蘇り、何となく嬉しく感じました。今回の”原点回帰”の試みは非常に好感が持てました。
そして、相変わらず作品の内容が素晴らしいのです。今回の作品は新興宗教、カルトに関するお話でしたが、テーマ自体が斬新であるうえ、その切り口というか、表現方法など全てが面白かったです。公演パンフレットの宅間さんのコメントに「昨年起きたあの歴史に残る大事件が発端です」とあるように、あの衝撃的な事件から着想を得た作品なのだと思いますが、だからなのか、妙に現実とリンクする部分があったり、一方で、コメディータッチで描かれている部分もあったりと、なかなか奥が深い構成であったように感じました。リアルとバーチャルという表現が適切なのかは分かりませんが、そのバランス感が絶妙であると感じました。”宗教”と聞くと、「自分には関係ない」「聞きたくない」などと拒否反応を示す人々も多くいると思いますが、作品にも描かれているように、人々が神様に何かを願掛けしたりするようなシーンは割と多くありますし、案外身近な問題だと気付かされます。"洗脳"と"マインドコントロール"のくだりを含め、何か面白いなと思いました。また、随所にあったアドリブのシーンも過剰に狙い過ぎず、自然な笑いを生み出しており、とても心地好かったです。
東京セレソンDXのお芝居を拝見していた頃からの印象になりますが、宅間孝行さんの演出・脚本・企画などはどれも常に期待の上を行っており、個人的には人間国宝に相応しい方と思っています(人間国宝の定義を全く理解していませんが…!)。既にタクラボの第2弾やタクフェスの第11弾公演が決まっているようで、今後も楽しみです。
宅間さんはもちろん、ハマカーンの浜谷健司さん、阿部力さんも存在感がありましたし、初見の井上新渚さん、守屋慎之介さんらも印象に残りました。蓮役の矢野ななかさんも初見の役者さんでしたが、代役とは思えない圧巻の演技力で驚きました。短期間であれだけの表現が出来るのは素晴らしいの一言です。