実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/04/29 (土) 13:30
座席1階
浅利慶太の生誕90年という。パンフレットによると、浅利はこの演目を節目のたびに演出し、515回もの公演を重ねた。後を継ぐ野村玲子は「この作品があったから今の私があると言っても過言ではない」とも言っている。それだけ思い入れのある舞台の初日に足を運んだ。
三部構成でその間に15分の休憩を挟むのは、舞台セットの大きな転換があるからだろう。第一幕は水の精オンディーヌを育てた漁師夫婦の粗末な小屋。第二幕は宮廷、第三幕はオンディーヌを裁く裁判が行われる城の中庭という具合に、大きく模様替えをする。第二幕で魔術師に化けた水界の王が、タイムマシンのように過去を再現する魔術をやってみせるが、「本当に魔術ができるのか」と言われて披露する魔術は光と音による舞台セットがおどろおどろしいが効果的だ。
婚約者がありながらオンディーヌに一目ぼれする騎士ハンスが「自分は女を見る目がある」と言う場面とか、古典作品だから仕方がないとは言え、ジェンダー重視の今ではギョッとするせりふもある。また、「接吻」という言葉が乱発されるのには少し閉口する。ここはもう、「キス」にしてもいいのではないだろうか。
歌の場面が少なく、もっとミュージカル仕立てにしてもいいように思う。個人的にはオペラ歌手出身の松井美路子の声をもっと聞きたいと思った。ラストシーンは切ない場面だが、さりげなく過ぎていくような感じもした。
一方、気のせいかもしれないが浅利が劇団四季でたたき込んだ明瞭な発声、劇団四季メソッドは、その独特な感じが少し薄まっていたようだ。分かりやすい発声であることには違いないが、より自然な感じになったようだ。このあたりに変化を感じた。